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歯ごたえが軽めだけど、後に引きます

各方面で発売前から傑作と言われていたジョージア・アン・マルドロウの新作、個人的にはなかなか手こずりましたが、やはり今年屈指のアルバムなのは間違いないかと。
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映画の公開で突然話題の人になったニーナ・シモンの名前が挙がりまくるマルドロウですが、私の印象はちょっと異なるかな。シモンのように生傷をさらけ出す生き様ということでは、メアリーJの方がずっとシモンの後継者っぽい。歌うテーマが違うとはいえ。マルドロウはもっと可愛らしいし、精神的にタフなのと同時に安定しているイメージ。でも同時に、ペンテコステ派直系のホーリーゴーストを召喚するマンボでもあるのですけどね。
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正直、本人の音楽性ではなく、ルックスだけで次代のニーナ・シモンって謳っていません?

手こずった理由はおそらく曲の並び。A面冒頭4曲の流れがもう一つ好きになれないこと、もっと言うと曲自体がやや薄口に感じること。マッドリブに手綱を預けた名作(迷作?)≪Seeds≫の途方もない遠投力に比べると、分かりやすすぎるというか、聞き分けが良すぎるというか。このうち3曲を手掛けたのはマイク&キーズなので、彼らの作る音があまり好みではないだけなのかも
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ぐっと良くなるのはA面のラスト2曲“Aerosol”、“Vital Transformation”から。深海を潜行するようなグルーヴに深みというよりはひたむきさを感じさせる素直な歌を聴かせる“Aerosol”はシンセベースのフレージングが猛烈に私の好み。完璧な一曲ですが、曲が短すぎるのが唯一の弱点。15分ぐらいの長尺で聴いてみたいものです。もう少し滑らかなシンセグルーヴで聴かせる“Vital Transformation”で聴かせる歌は良い意味で更に青臭くて、これにも惹かれます。
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B面の前半もなかなか素晴らしい。クレジット見ないと絶対に気付かないギャップバンドのカバー“You Can Always Count On Me”はゲストのShana Johnsonのソウルフルな喉とダドリー・パーキンスのファンキーな喉の共演で音にコクが増していてオリジナルを軽く超えています。(が、これも短すぎません?) これぞマルドロウというイメージの“Canadian Hillbilly”も依然として快調。割とブレインフィーダーっぽい“Bobbie’s Dittie”を経て、可愛らしい“Chao”で幕。
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“Aerosol”から“Canadian Hillbilly”ぐらいが私のお気に入りポイント。A面ラストの2曲はそれぞれMoods、Lustbassという人たちの曲。シンセの沼にズブズブと沈んでいく感じが非常に好ましいわけですが、この辺の音の肌触りには似た感じを覚えていると思って思い出してみると、2年前のキングの1stですね。質感、空気感、かなり近い印象を受けますね。キングのパリス・ストローザーとの相性は抜群なはずなので、是非とも一度コラボしてほしいものです。更にンデゲオチェロ姐さんがベースを弾くと間違いなく猛烈なグルーヴが展開されそうだと思うのですが、どうでしょう?
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マルドロウは2月に来日するそうで、そのライブも大いに気になるところですが、どんな編成で来るのでしょう?
by zhimuqing | 2018-12-20 23:28 | Funkentelechy | Comments(0)
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