ただね、この後が良くない。MOR全開な“Home”、 リズムが単調でバネが効いていない“Hold On”と続く流れがなかなかに退屈。中道路線を歩むのが悪いとは言わないけど、曲自体に魅力がない。その後、メロウな“Fun & Games”、マックスウェルの近作を思い出す“Floating thru Time”、 “Broken Beat & Busted”で持ち直すものの、途中でだれてしまった流れはなかなか取り戻せない。ベネイが好きなサルサ調の“Run to Me”も悪くないのだけど印象に残らないし。おまけに終盤の“That Day”、“Never be the Same”でまた王道ポップスに行ってしまい、不完全燃焼でアルバムが終わってしまう。
クレジットを眺めると、昔からの仲間のデモンテ・ポージーがこのアルバムの制作のメインのようで、これまた昔からの相棒の従兄弟のジョージ・ナッシュの名前がないのが目を引く。やはり名ギタリストでもあるジョージ・ナッシュ・Jrが作るオーガニックな音作りの上で軽やかな身のこなしを魅せるベネイが私は好きなのだな、と。ポップな曲で大ヒットを飛ばせ、というレコード会社の意向もあるだろうし、ベネイ本人も元々そういう体質の人だから、仕方ないのだけど、やはり≪Lost in Time≫でとことんこだわってみせた(魅せた)ソウル歌唱こそがファンが求めているものだと思うのだけどねぇ。