K子姐さんから絵本や児童書を突然頂いたのですが、
その中にわざわざ遠方で買い求めて頂いた子供用の お守りまで入っていて、非常に感動しましたよ。 本当にありがたいことです。 さて、頂いた本の中には私のもしかしたら一番好きな作家である ミヒャエル・エンデのこれまた大傑作である「果てしない物語」が。 エンデの中でも「モモ」と並んで、一二を争うぐらい大好きなこの本、 初めて読んだのは、多分小学5年の終わりか6年の頭ぐらい。 狙っているのかと裏読みしたくなるほど、センスの無さに定評のある 我が父が何故か突然お土産に持って帰ってきた本がこの本なのです。 女性(もちろん家族以外)の影があるのではないか?という疑いもありますが、 いやいやそんなセンスの良いヒトが周りにいたはずも無いとの意見もあり、 もはや当の本人がこの本のこと自体を忘れている(自己申告)こともあり、 おそらく解明されることのないU家の謎として、 代々伝えていこうと考えている今日この頃です。 さて、先日実家に帰ったところ、父から、脱原発といえばこの人だ、 一度会ったことあるけど、優しげな人だったぞ!と渡された本が。 電力会社からの口止め料3億円を断った男!と週刊誌に特集されていた 原子力資料情報室代表だった高木仁三郎さんですね。 今回読んだのは3冊。 原子力資料情報室 「プルトニウムのすべて」 岩波書店 「プルトニウムの未来 -2041年からのメッセージ-」 社会思想社 「宮沢賢治をめぐる冒険 水や光や風のエコロジー」 プルトニウムの問題点に関して書いた本だけど、 プルトニウムの危険性をただ強調するので無い所が信頼できますね。 廃棄物の処理方法が実際に手詰まりになりつつあり、 その廃棄方法に対して知恵を絞らなくてはならない、 それが次の世代に対する世代的な責任なのだ、という主張は 実に説得力があります。 「プルトニウムの未来」は岩波新書なのだが、本人が後書きで触れているように これは岩波新書としては相当異色の本ですね。 1991年から2041年にタイムスリップしてしまった主人公が 未来のプルトニウム社会を体験するというフィクション! 「プルトニウムのすべて」で展開された原子力推進側に対する問題提起を そのままフィクションとして書き上げていて、読み物としても面白い。 なのですが、一つだけ致命的な欠陥がありますね、この本。 タイムスリップした草野をナビゲートする未来の原発推進科学者の伊原壮一、 諸問題に対して誠実すぎるのですね、 2011年3月11日以降の今の日本に住んでいる私達から見てしまうと。 もちろん作者の高木さんの責任ではないのだけど。 残念ながら、今回の事故以降の対応を見ていると、 電力会社、保安院、推進側の学者達含め、この伊原よりも 誠実に問題を捉えていないとしか思えない。 さすがの高木仁三郎氏もここまでひどいとは予想していなかったのかな。 もしかしたら、実情が分かっていただけに、 未来に対する希望的観測でこのように描いていたのだとしたら、 それはそれで大変不幸なことではありますね。 さて、今回の3冊で実は一番凄いと唸らされた本が 宮沢賢治についての講演をまとめた「宮沢賢治をめぐる冒険」。 父から貰った本でここまで感銘を受けたのは4半世紀ぶりです。 平易な文章で、しかも奥行きが深い。 宮沢賢治の作品の中で出てくる水のイメージを 「生というものの循環」に巧みに結び付ける1章「賢治をめぐる水の世界」も 非常に面白いというか、深みがある考察なのだけど、 宮沢賢治と自身の境遇を結び付けつつ、科学者のあり方に関して 考察した2章「科学者としての賢治」は圧巻だ。 含蓄の深い言葉がてんこ盛り、アンダーライン(私は入れない派)を入れながら 読んだほうがいいような気がしてくる。 人間がより良く生きる為の科学が人間の突出を促したが、 「よりよく共に生きる」ことに繋がっていないことに対する懸念は 至極もっともな指摘だと思いますね。 p97 学問そのものが、人間の生命への影響や恐さだとかではなくて 理論的にいえばこうなるはずだ、という回路の中だけで ことが発展してしまう。 しかも、誰しも自分のやっていることを肯定的にとらえたいですから、 将来にバラ色の期待をする。 したがって、肯定面にばかり目がいって、否定的な面は軽視ないし 無視してしまう。 p106 この地上の自然に対して技術を突出させ、自然を征服することで 人間の繁栄をもたらすと考えるのではなく、与えられた自然条件と もっともよく折り合って共生できる付き合い方を見つけていく、 科学も技術もそのための解を見つけるために努力していく しかも、この展開の中で、「グスコーブドリの伝記」への繋げ方がまた見事。 火山を爆発させる為、命を失ってしまうブドリを描いたこの作品は この物語の最後の一節を抜き出して、これは悲劇的な話ではなく、 一種の循環、仏教で言うところの輪廻だと結び付ける。 その上で、科学者として、試行錯誤こそが大事だと説き、 農民と共に生きようとして挫折したといわれる宮沢賢治の生涯は しかし、一種の実験であり、挫折とか失敗とか成功といった物差しで 測れるようなものではないと、結んでくる。 なによりも、宮沢賢治への理解が深まりましたよ。 昔少しだけ読んだだけですけど、これはもう一回きちんと宮沢賢治を 読まないといけないですね。 残念ながら2000年に逝去されているのですね。 大変残念なのですけど、一方で今の日本の惨状を見ると さぞかしがっかりしてしまったのではないかとも思ってしまうところが 別の意味でこれまた大変残念ですね。 友へ 高木仁三郎からの最後のメッセージ 「死が間近い」と覚悟したときに思ったことのひとつに、 なるべく多くのメッセージを多様な形で 多様な人々に残しておきたいということがありました。 そんな一環として、私はこの間少なからぬ本を書き上げたり、 また未完にして終わったりしました。 未完にして終わってはならないもののひとつが、この今書いているメッセージ。 仮に「偲ぶ会のためのあらかじめのメッセージ」と名付けますが、 このメッセージです。 私は大げさな葬式のようなことはやらないでほしい。もし皆にその気があるなら 「偲ぶ会」を適当な時期にやってほしい、と遺言しました。 そうである以上、それに向けた私からの最低限のメッセージも必要でしょう。 まず皆さん、ほんとうに長いことありがとうございました。 体制内のごく標準的な一科学者として一生を終わっても何の不思議もない人間を、 多くの方たちが暖かい手を差しのべて鍛え直して呉れました。 それによってとにかくも「反原発の市民科学者」としての一生を 貫徹することができました。 反原発に生きることは、苦しいこともありましたが、 全国、全世界に真摯に生きる人々と共にあることと、 歴史の大道に沿って歩んでいることの確信から来る喜びは、 小さな困難などをはるかに超えるものとして、 いつも私を前に向かって進めてくれました。 幸いにして私は、ライトライブリフット賞を始め、 いくつかの賞に恵まれることになりましたが、繰り返し言って来たように、 多くの志を共にする人たちと分かち合うべきものとしての受賞でした。 残念ながら、原子力最後の日は見ることができず、 私の方が先に逝かねばならなくなりましたが、 せめて「プルトニウムの最後の日」くらいは、目にしたかったです。 でもそれはもう時間の問題でしょう。 すでにあらゆる事実が、私たちの主張が正しかったことを示しています。 なお、楽観できないのは、この末期症状の中で、巨大な事故や不正が 原子力の世界を襲う危険でしょう。 JCO事故からロシア原潜事故までのこの1年間を考えるとき、 原子力時代の末期症状による大事故の危険と結局は放射性廃棄物が 垂れ流しになっていくのではないかということに対する危惧の念は、 今、先に逝ってしまう人間の心を最も悩ますものです。 後に残る人々が、歴史を見通す透徹した知力と、 大胆に現実に立ち向かう活発な行動力をもって、 一刻も早く原子力の時代にピリオドをつけ、 その賢明な結局に英知を結集されることを願ってやみません。 私はどこかで、必ず、その皆さまの活動を見守っていることでしょう。 私から一つだけ皆さんにお願いするとしたら、 どうか今日を悲しい日にしないでください。 泣き声や泣き顔は、私にはふさわしくありません。 今日は、脱原発、反原発、そしてより平和で持続的な未来に向かっての、 心新たな誓いの日、スタートの楽しい日にして皆で楽しみましょう。 高木仁三郎というバカな奴もいたなと、ちょっぴり思い出してくれながら、 核のない社会に向けて、皆が楽しく夢を語る。そんな日にしましょう。 いつまでも皆さんとともに 高木仁三郎 世紀末にあたり、新しい世紀をのぞみつつ 調子に乗られても困るなぁ。
by zhimuqing
| 2011-05-16 00:28
| Make Me Wanna Holler
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