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うまい喩えが見つからない

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世界中のサザンソウル・マニアが大興奮しているという
スペンサー・ウィギンズのフェイムやXLレーベルでの
未アルバム化曲や未発表曲を集めたCD『Feed The Flame』、
ここ数日聞いているのですが、聞き込めば聞き込むほど、
どんどん良くなってくるという、なんというか危険なアルバムですね。

いっちょまえにサザンソウルを良く聞いていた20年ぐらい前に
ゴールドワックス音源を集めたヴィヴィッド盤のCDを手に入れ、
その物凄く濃厚なヴォーカルにしびれて以来、
折に触れて棚から引っ張り出して聞いてきた私。
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未アルバム化の曲も物凄いらしいと、風の噂で耳にしてきたのだが、
シングルにまで手を伸ばし始めると収拾(収集とも言う)がつかなくなるので、
流石に手が付けられなかった私にとっては、非常にありがたいCDですね。

私なんかには良く分からないレーベルの権利関係で、
ヴィヴィッド盤に入っている曲も3曲入っているが、
それ以外の19曲は今回私は初めて。
うち6曲は完全に未発表曲らしい。

正直、ゴールドワックス時代が凄まじいだけに、
過大に期待しすぎないようにしていたのだが、
やっぱりこの時期のウィギンズは凄いですね、問答無用の熱い歌いっぷり。
オーティス、ジェイムズ・カー、O.V.ライトと並んで称されるだけはある。
ただ、ウィギンズには上記3人と違い、これといったヒット曲が無いのだが、
そこが逆に判官贔屓というか、持ち上げたくなってしまうところです。
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豪快なシャウトだけでなく、ファルセットに移行するシャウトとか、
力の抜き差し加減、何気なく歌ってもディープになってしまう節回し、
技とかテクニックとかそういう次元を超えた、そういう体質なのだと
納得させられる歌なのだ。
バラード表現も素晴らしいですが、ジャンプ、ミディアムでの
リズムノリもこれまた絶妙だと思います。

タイロン・デイヴィス調で始まる1曲目(途中で熱血になるけど)から
最後の私が物凄く大好きなソロモン・バークのカバー「Cry to me」まで
現時点でも気に入った曲は山ほどありますが、
オーティス・クレイで有名な4曲目、Sound of Memphis音源の6曲目、
エタ・ジェイムスの7曲目、ダンペン作曲の9曲目と繋がっていく
前半から中盤への流れがかなり燃えますね。
力強さと技と華麗さを兼ね備えた全盛期のアキーム・オラジュワンのよう?
ちょっと違うか、2000年当時の井上康生?
どうも、うまい喩えが見つからない。(無理に喩える必要もないけど)

そういう訳で、サザンソウルの音に合わせて歌わせると、
しかもその音がディープであればあるほど、素晴らしい歌を聞かせる
スペンサー・ウィギンズですが、まったく弱点が無いわけでない。
フェイムからのシングルとして出ていた15曲目、16曲目や
ヴィヴィッドのLPに入っていたらしい14曲目のように
ファンクなフレイバーが加わった曲だと、ほんの少しだけだが、
歌のノリがぎこちなくなってしまうのだ。
人によっては、これを熱血歌唱と捉えるのかもしれないですけどね。
(なので、余計に前半から中盤にかけての凄さが沁みるということもある。)

でも、まあ、そういう曲でも、標準レベルは軽く超えているわけで、
こうやって、入手しにくい音源がまとめて貰えただけでも
感謝の二文字に尽きるわけで、今年度のリイッシューでも
間違いなくトップレベルの仕事です。
ただ、発売元のKENTに一つだけ注文を付けるとしたら、
バック・ミュージシャンのデータもつけて欲しかったところなんですけどね。

スペンサー・ウィギンズはヒットに恵まれないまま、
音楽業界に見切りをつけて、マイアミに引っ込んで牧師さんになるのですが、
こうやって、40年後とはいえ、元気なうちに世界中で再評価されていることは
とても良かったと思いますね。
2000年以降、ゴスペルアルバムを3枚出しているようだけど、
この辺で復活してもらいたいですね。
ディープ・ファンク経由でディープ・ソウルにも
光が当たっている今こそ、絶妙なタイミングだし。
でもって、ブルース&ソウル・カーニバルあたりで日本に呼んで頂ければ、
私ならずとも悶絶するソウル・ファン、続出するでしょうけどねぇ。
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なんだったら、弟のパーシーさんと一緒に来日するなんてのも
オツなもんではないでしょうか?M&Iさん?
それにしても、兄弟ともに非常に味わい深いルックスで、
なんといいますか、シミジミと愛着が湧くのであります。
by zhimuqing | 2010-08-14 00:41 | Blues 4 Terapin | Comments(0)
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