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どこまでもブルーズな件

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乱読で読み散らかしていく私にして珍しく
もちろん完全ではないのだけど、
レディ・ジョーカー、一文字一句丁寧に読みましたよ。

凄すぎるのだ。
主要な登場人物の濃密過ぎる心情描写に
もう有無を言わせずに圧倒・屈服されてしまう。
主だったところの9名の彫り込み具合は尋常ではなく、
情念とか悔悟とかそれに対する弛緩とか解放とか
黒々とした極太の毛筆で自在に描かれている。

前に書いたように単行本の詳細までは覚えていないが、
ここまでの描写はなかったと思う。
まあ、当時から私も多少は年をとって、
ものの感じ方が変わってきたのかもしれないのだけど。

合田と元義兄の交流、城山社長とその部下の葛藤、
組織としての自分と個人としての自分の折り合いの難しさ、
新聞記者や警察、企業といった組織の中にいることの焦燥感、
自己と他者との距離に対する安心感と違和感、
そういった諸々の感情が緻密な構成力でもって
物凄い説得力で押し寄せてくるのだ。

単純な私なんかは、それぞれの立場の登場人物に
いちいち感情移入してしてしまって、
もう心の内がざわめきっぱなしで、
非常に不安定な状態になってしまうぐらいの作品だ。

やはり高村薫がベストだな。
この先、この人を超えるような人が簡単に出てくるとは思えない。
あまりに巨大すぎる。どこまでもブルーズ。

人生の中でも最高峰の一冊だと、ここで断言しましょう。
読んでいない人は必ず読むべし。
上中下巻で計1535頁になるけど、それでも読むべし。
合田シリーズの「マークスの山」「照柿」を先に読んでもらわないといけないが、
そうなると、それぞれ744頁、728頁、合計で3007頁になるけど、
それでも読むべし。
読んで面白くなければ、それは本のほうに問題があるのではなくて
読んだ人間の方に問題があるのだ、と格好つけて言いたくなるほど、
これは深いし、この本を読めることに感謝しなければならないのだ!
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by zhimuqing | 2010-04-03 01:25 | Blues 4 Terapin | Comments(0)
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