『エリントンとミンガスは生涯かけて探究するだけの価値がある』と言ったのは
泣く子も笑い出すラサーン・ローランド・カークですが、
そのカークさん、私にとってはPファンクと並んで探究するだけの
価値があるアーティストなのです。
ある程度全容が解明されているPファンクに比べると、
ローランド・カークはまだまだ謎が多く残されていますねぇ。
私も伝記を読んだりして、少しずつ音源を集めているのですが、
この伝記、一つ一つのエピソードが濃厚すぎて大変面白いのだが、
木を見て森を見ず、みたいな感じになってしまい、
かえって全体像が見えなくなってしまうきらいがありますね。
巻末のディスコグラフィーも研究不足の私には少し不親切ですし。
そんな私に強い味方というか参考書が現れましたよ。
「週刊ラサーン ローランド・カークの謎」
それにしてもマニアックな本だ。「習慣ラサーン」でもよかったかも。
著者の林建紀氏はカークの伝記の翻訳者です。
正直言うと、伝記の翻訳は言葉がこなれてなくて読みにくいのだが、
そんなことは些細なことで、こういう先人の地道な努力には頭が下がりますね。
この本のユニークなところは何と言ってもその切り口。
カークの音楽人生を初期、前期、後期、晩年の四つに分け、
それぞれの時代を様々な角度から分析していくのだが、
アルバムや曲を解説するありきたりの分析ではないのである。
時代ごとに使用されている楽器や曲調、曲の長さ、バンドメンバーの変遷等
客観的なデータで分析するという、ある意味理系的なアプローチをしています。
思いつきそうで、なかなか思いつけないですね。
しかも非常な労力を費やさないと出来ない仕事ぶりです。
カーク必殺の2管、3管アンサンブルの分析も非常に分かりやすいし、
バンドメンバーのチョイスに対する解説もなるほどと頷けるものだ。
ディスコグラフィーも整理されていて、非常にすっきりした感じがしますよ。
曲ごとの解説はない(少しある)が、それは自分の耳で確かめればよいわけだし、
私の痒い所に手が届いた感じです。
一つだけ注文をつけるとすれば、第1章の「命名の謎」。
本名のロナルド・セオドア・カークを役場の庶務係向きの名前だ、と言っている点。
分かってないなぁ。惜しいなぁ。
カークという名前は宇宙に通じる名前ですよ。
最後のフロンティアである宇宙に突き進んでいく男の名前でしょ。
だからチャーリー・ハンターがカークとJBとモンクをコピーするバンドに
T・J・カークって名前を付けたんだけどなぁ。
(J・T・カークにしないところがハンターのひねくれた所ですけど)
とまあ、そんなことで、私の探索の旅もこの燃料のおかげで
一気に進みそうな、そんな予感に打ち震える今日この頃なのです。
それにしても、カークとジミヘンの共演テープ音が悪くても聞いてみたいもんだ。
色々聞いたが、やはりこれがベストだな。ということで、この10枚組も購入しなければならないのか?