ハードレヴォリューション

ジョージ?って聞かれたら、ハリソン・ベンソン・デューク・アダムスと
答えは人それぞれでしょう(アダムス派は相当なマニアック)けど、
やはりクリントンって答えるのが仁義ですよね。
(ブッシュって答える人はお笑い好きの人ですよね?)

もちろん私もクリントンって答えますけど、解答欄が二つあった場合は
私の場合間違いなくジョージ・P・ペレケーノスって入れますね。
ワシントンDC出身のギリシア系アメリカ人の作家です。
ハヤカワ・ミステリ文庫でこれまで11冊出版されています。

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で先日の出張の時に東京駅の本屋で見つけましたよ、新刊を。
「変わらぬ悲しみは」(原題:HARD REVOLUTION)ですよ。
ワシントンの黒人探偵「デレク・ストレンジ」シリーズの第四弾です。


公民権運動が盛り上がっている時代を背景に、これまで曖昧に触れられていた
主人公デレクの少年~青年時代が描かれています。

ペレケーノスを読む時の楽しみといえば、話の中で語られる音楽の話です。
今回は60年代後半ですから、時代はモータウンかスタックスなので
当然のようにオーティスとかマーヴィン・ゲイの名前が出てきますね。

ピケットとかマーヴィンのレベルだと他の小説でも出てきそうですが、
ペレケーノスは一味違います。
主人公デレクにスペンサー・ウィギンズとOVとかのシングル集めさせたり、
悪役にデイヴィッド・ラフィンの声について語らせたり、
デレクの父親はサムクックの死後に絶望して音楽聴かなくなったり、とか
一言で言えば好き放題やってますね。

他の作品でも、若者にグレン・ゴーインズとメイシオについて熱く語らせたり、
チャック・ブラウン(DCはゴーゴーの地元ですもんね)を例えに出したり、
オハイオプレイヤーズの演奏力の高さに触れてみたり、
ギリシア系なのに日本のソウルマニアばりの暴れぶりです。
ソウル聞かない人にはまったくチンプンカンプンでしょうけどね。
訳者も結構苦労しているみたいで、毎回細かい人名とかのミスがありますね。

そんなこの上なく私好みの小道具ちりばめた舞台設定の上で
骨太な話が展開されるのだから、これはもうたまりません。
単なるミステリとかクライムノヴェルではありませんよ、ペレケーノスは。

たしかに悪者との戦いのシーンは多いですが、
様々な角度から光を当てて人物像の奥行きを描く手法を縦糸に
冷徹に見えて その実とても温かい社会への視線を横糸に
丁寧に編み込んで語られるストーリーがたまりません。
ストリートの悪者も単純化されずに、主人公もむやみに暴力をふるわないし。

そして何より私を惹きつけるのは、
作中で描かれる大人の毅然とした姿ですね。
町のレストランで働くデレクの父親や学校の用務員といった
ヒーローではない市井の人々のタフな生き様の描かれ方が良いのです。
主人公達の内心の葛藤の描写も話に深みを持たせていますし、
サラリと織り交ぜられる友情や家族への愛情も、
さりげないだけに余計に心に染みこみます。

だけれども、べとつかない部分が私にとってとても大事です。
人によっては感じ方は違うかもしれませんが、
読後感は乾いているところがいいのです。
(スッキリ爽やかという意味ではないですよ。)

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この読後感に一番近い感じなのは
カーティス・メイフィールドの73年の大傑作
Back to the worldです。
乾いた感じと温かい感じの混ざり具合が
とても似ていると思います。




ということで、ペレケーノスにベタ惚れな私ですが、
出版元のハヤカワ・ミステリに3点要望があるのです。

①表紙のデザインはアメリカ版の方がはるかにカッコイイ。

②邦題はハードボイルド感を狙いすぎて、逆にカッコ悪い。
  「野獣よ牙を研げ」とか「曇りなき正義」とか「俺たちの日」とか
  大藪春彦みたいで、なんだかペレケーノスに似あわないっす。

③今後も絶対買うので、ずっと出版してください。
  ウォルター・モズレイみたいに2冊出版した後は梨の礫なんてのはナシですよ。

以上、三点ですが心からお願いしますよ。
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by zhimuqing | 2008-03-28 20:13 | Funkentelechy | Comments(0)
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