気長に行こう!

ジュニア・ウォーカーは本当に評価が十分にされていないというか、もう“Shotgun”だけでしか語られていない感がありますね。アルバムのCD化もほとんど進んでおらず、60年代後半以降のものはレコ屋に結構安値で転がっているのが現状。
e0147206_1955916.jpg
どちらかというとソウル以前のリズム&ブルースのイメージの強いジュニア・ウォーカー。モータウンにはジュニア・ウォーカーというソウルフルな人もいました、65年に“Shotgun”がバカ売れしました、おしまいという感じなのですが、ウォーカーが本領を発揮するのは実はその後なのですね。65年以降急速にファンク度を増していくソウル界の趨勢のなか、流れに取り残された、なんてことは全くなく、実に器用かつタフに渡り合っていったというのが私の印象。

ということで、安レコを見つけるとジュニア・ウォーカーを買っている私。安レコしか手を出さないのでなかなか調査は進まないのですが、先日発見した73年発表の≪Peace & Understanding Is Hard To Find≫、これはなかなか掘り出し物でした!ジャケの絵を描いたのは同じ73年発表の大傑作≪Innnervisions≫を手掛けていたエフラン・ウルフ。となると、もうジャケを見ているだけで気持ちの良いヴァイブが溢れてくる気がする、てなもんですが、その予感は外れていませんでした。
e0147206_19553711.jpg
ジュニア・ウォーカー&ジ・オールスターズなのに、モータウンの常でジュニア・ウォーカー以外のメンツが常に不明確。演奏を担当したスタジオミュージシャンの名前でなく、れっきとしたグループなのに名前が分からないというのがなかなか苦しい。モータウンとしては主役のウォーカーのキャラが際立っているので、それで十分だという考えだったのでしょうが、グループなんですけどね。ジャケにも当然のように記載がありません。それどころか、ウォーカー以外の写真もなし。オリジナルのメンバー、正確にはモータウンで脚光を浴びた時のメンツは鍵盤がヴィクター・トーマス、ギターがウィリー・ウッズ、ドラムがジェイムズ・グレイヴスなのだが、そこにベンジャミンやジェマーソン、ヴァンダイクなんかが適宜加わっているので、もう訳が分からないのですね。謎が深まる一方です。
e0147206_19555595.jpg
これはかなり早い時期の写真。ギターのウッズが右上、ドラムのグレイヴスは多分左上、トーマスは多分左下。あくまでも私の予想ですが。一番気になるのは言うまでもなく右下の人。

前作まで長い間アルバムを手がけていた盟友ジョニー・ブリストルがソロデビューにあたりモータウンを離れたので、今作からはブリストル印がなくなったのが一番の変化でしょうか?プロデュースは連名を含め、ウォーカー自身。バンドのメンツもおそらく変わっているように聴こえます。バンドメンバーの名前はありませんが、A面はバラエティーに富んだ制作陣の名があります。J5の“Maybe Tomorrow”で名を挙げたジェイムズ・アンソニー・カーマイケルにウィリー・ハッチにグロリア・ジョーンズ、ハル・デイヴィス、そしてジーン・ペイジ。

が、しかし全く変わらないウォーカーのサックスと歌。偉大なるワンパターン、最高です。A①の“I Ain’t Go Nowhere”はドタドタとぶちかます豪快なドラムに対抗する元気いっぱいのウォーカー。73年の押し相撲名勝負として記憶されるべき一曲でしょう。バックの女性コーラスも応援団のよう。それにしてもこのアレンジはカーマイケルというのが笑えます。ライオネル・リッチーやアトランティック・スターのイメージとはあまりにかけ離れたコテコテぶり。

随所にデイヴィッドTのギターが効いているA②“I Don't Need No Reason”はパム・ソーヤーとリオン・ウェア作曲。歌はメロウな女性コーラスに任せ、御大は漢気溢れるサックスを聴かせます。A③“It's Alright, Do What You Gotta Do”は曲調もメロディーも含め、ウィリー・ハッチ印。私の買ったLPには誰かが曲名の横にSuper Hot!とボールペンで落書きしてくれています。ハッチよりもずっといなたいウォーカーの歌、そして合間にブピィィィィィーーと嘶くサックスが麗しい1曲。ハッチとの相性はかなり良さそうなので、確かにHotというか、暑苦しい1曲です(誉め言葉です)。
e0147206_20103917.jpg
4曲目はキャロル・キングの名曲。これは過去の路線を踏襲したもので意外感はありません。ソウルフルで強引な節回しにジョニー・ギター・ワトスンを思い出しますが、さすがにもっと太いウォーカー。太いけどゴージャスではないところが燃えるところでもあります。サックスはかなり丁寧で、その対比がまたいかします。

で、A面ラストとB面全5曲はプロデュースもアレンジも全てジュニア・ウォーカーのみ。実はアルバムのハイライトはこの6曲。B面1曲目は驚きのジミー・クリフのカバーですが、その他の曲はウォーカーとバンドメンバーによるもの。こてこてのソウルジャズ路線。これが猛烈にカッコイイ。とは言っても、ジャズ含有率は当社測定で2%ほど。徹底してチキン・グリースでグリッティーでアーシー。73年の時点では少し汗臭すぎる音だけど、しっかりとJBのファンク革命には対応している音。おそらく当時のジュニア・ウォーカー&ジ・オールスターズが生で聴かせていた音なのでしょう。

バンドメンバーの腕もすこぶる良く、誰が弾いているのか気になるところですが、作曲クレジットから判断すると、鍵盤はヴィクター・トーマスで変わらず、ギターはアーノルド・ラングレー、ドラムはジェローム・ティーズレイかと。ラングレーとティーズレイはマンハッタンズやアイク・ターナーの元で腕を磨いていた人々。ベースはロナルド・ハーヴィルという人かと思うのですが、確証は無し。ロン・ハーヴィルだとクラレンス・カーターでベース弾いていた人なんですが。なるほどと思わせる面子ですな。

ベストは“Gimme That Beat Part 1 & 2”でしょう。何度リピートしても楽しめる傑作。イントロから鉄壁のリズム隊、ウォーカーの歌もサックスも最高のノリを見せますし、特にチキン・スクラッチな単音ギターのカッティング、特にサビに行く直前、が抜群です。これは72年に一応シングルになっているようですが、HIP-Oのモータウン・シングル集72年盤には収められておらず全く持って残念なことです。(Hip-Oの72年は他にもエリック&ザ・バイキングスの2枚目が入っていないという致命的なミスもあります。うぅ)
e0147206_2035464.jpg
このシングルは欲しいかも!

B④の“Country Boy”でのファットなリズムも猛烈に気持ちよい。ドラムが特に圧巻かと。この手の曲ではウォーカーの歌もサックスも実に映えて、独壇場といったところです。鉄壁なリズム隊といえば、A⑤に尽きるでしょう。ベース、ドラム、ギターの一体感、これは長いツアーを重ねないと出せない風味でしょう。B⑤のアルバムタイトル曲“Peace And Understanding (Is Hard To Find)”の語り口調(でもべらんめえ調)なんかはJBを通り越してジョー・テックス的。がむしゃらな突進力は深遠なタイトルともう一つマッチしていない感もありますが、その切迫感が例えばオーティスのサティスファクション的な不器用な男感に通じるものがあり、大いに好感を覚える私。一番割を食ったのは“I Can See Clearly Now”かな。

ということで、この時期のバンドの勢いがもの凄かったことがはっきり分かる濃厚な内容。ソウルジャズのブームが次来た時には大いに再評価されそうな予感もします。問題はそれがいつ来るのか?というところなんですけどね。Hip-Oが無くなった今、細かいデータとともにまとめて再発してくれそうなところは英KENTしかありませんが、イギリスのノーザンソウルシーンとは微妙に的が外れそうだし、なかなか難しいのかもしれません。この時期のライブ音源を発掘してくれると鼻血もんなんですが。やはり気長に格安LPを探していくしかないのでしょう。ま、それはそれで楽しみなんですけどね。
[PR]
by zhimuqing | 2018-01-14 20:08 | Funkentelechy | Comments(0)
<< DNAの旅 随分遠回りしたものだ >>