随分遠回りしたものだ

2018年、新年一発目に購入したCDはなんとアルバム≪Batman≫。缶入りのブツが500円で売っているのを見つけたのです。
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バットマンのサントラを聴くのは随分久しぶり。発売されたのは89年。当時私は猛烈にプリンス・マニア化していた時代、背伸びしまくって海賊版を買っていた頃。当然新譜としてのCDを聴いていましたが、“Batdance”や“Partyman”のPVを面白く観ていた(というか、ジョーカーのメイクをしたプリンスが大好きでした)のですが、内容はそんなにしっくりこなかった記憶が。

雑誌なんかでも、売れ線に走った (セルアウトとまでは言ってなかったはず)けど、ラブセクシー・ツアーで抱えた負債をこれで完済出来てよかったではないか?といった感じの論調がほとんど。粋がっている高校生の私も当然その意見に与していたわけですね。実際、当時聴いていた回数は決して多くないはず。当然世間一般の評価も低く、廃盤になって久しいはずだし、中古屋さんでも格安で売られ続けているはず。
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で、おそらく28年!ぶりに聴き直すバットマン。これはねえ、はっきり言って名盤です。この魅力に気が付くまで28年、29年?思えば、私も随分遠回りしたものです。キャッチ―なフックやコーラスの部分部分は勿論覚えておりますが、細かな部分は全く印象が無い私。改めて聴き直すと、恐ろしくクオリティーの高い音楽ですね。よく考えてみると、88‐89年のプリンス、かっちょいいのは当たり前です。こういう言い方をすると語弊があるかもしれませんが、その後長く孤独な戦いが続いたその時代の音よりも、独創性(独走性と読み替えても可)や鮮度感、全てにおいて上回っていてもおかしくないわけです。

もっとも当時よく言われていたようにセルアウトしたものか?というと、決してそうとも限らないなと。確か当時読んだ記事では、映画のラッシュを観たプリンスはすぐさまミネアポリスに戻り、1週間でこのアルバムを作ったはず。この作り込まなかったことが、むしろ功を奏したように思いますね。当時の才能のきらめき、ひらめきがダイレクトの結晶化されてしまっているものではなかろうかと。
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ふたご座の男、プリンス。

ハウスへの傾倒という意味では最初期に当たるであろう“The Future”はこの後続いていく同系列の曲と比べてもファンクネスという部分で深度が全く異なる。選んだ音のチープな響きも最高。顕著に傾倒ぶりを見せた後の曲にはない卓録感が功を奏したとも言えますね。

“Trust”もハウス系を意識したものでしょうが、これは先祖返りしてしまったというか、ダイレクトにプリンスのライブ終盤の盛り上がりを写し取ったものになっている。そう、映画≪サイン・オブ・ザ・タイムス≫での“It’s gonna be a beautiful night”の後半のような。コーラスというかクワイアの使い方も絶妙。

ちなみに今回クレジットを読み直してびっくり。サウンズ・オブ・ブラックネスだったのね。声の使い方、特にコーラスの入れ方は当時のプリンス印そのものでありつつも、キャメオ~テディ・ライリーの横に引っ張るスタイルを掛け合わせていて、これまたカッコイイ。しかもSOBの分厚いコーラスと殿下の多重録音コーラスが混在しているのがまた耳を引くのですね。

ポップチャートでトップを取った“Batdance”はどうしてもジャック・ニコルソンの声の後に小林克也の曲紹介が脳内で流れますが、これは何度も繰り返し見たヴィデオの影響です。ここでの音の継ぎはぎはおそらくヒップホップの台頭を意識してのものだとも思うのですが、後にバンド単位でヒップホップに対抗しようとした時よりも勢いがあってよろしい。クワイアとの混成技と勢いで押し切った感じの“Lemon Crash”は≪Graffiti Bridge≫以降にもっと直接的に繋がる曲ですが、ハウス系の曲の中では一番弱いかな。
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それにしても、胸毛の絶妙な良さ、よ。

ドラムの音処理はあからさまにジャム&ルイスするのがまた新鮮。当時は全く気が付きませんでした。なぜでしょう。“Electirc Chair”なんかモロなのに。ま、86年ぐらいから一気にのしてきた元子分のコンビの動向をプリンスが気にしていなかったはずはないわけで、その辺の自身の中での再評価がグラフティ・ブリッジでのザ・タイム再結成に繋がったと今になった思うのですが、どうでしょう。

ギターの使い方はもろに≪Rhythm Nation≫ですが、そこに殿下色のギターがコラージュされたように入ってくるあたりは本当に痺れます。途中のソロも抜群。その後にコーラスが分厚くなるところ、あのシャウトが入るところ、一気に音が減って“Bob George”になるところ、もう溜息しか出ません。こんなに格好いいのに、当時ほぼスルーしていた自分の未熟さに驚きます。
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当時一番好きだった“Partyman”のどファンクの良さは変わらないけれど、バックでベースを兼ねるかのように時々鳴るギターの良さには当時気が付いていませんでした。“U Got the Look”あたりで開発された技。低音コーラスを含め、多分にラリー・グラハムに想を得たものだと思いますが、これは研究の余地がありそう。2分頃から飛び出すフックのカッチョよさは不滅。“Batdance”のファンクパートでのコーラスと並ぶ聴きどころ。途中のジャジーなピアノはミスター・フィドラーのアルバムに繋がるもの。唯一の弱点は曲が短いことでしょう。

続く“Vicky Waiting”はなんだか泣けます。こんなに良い曲でしたっけ?歌で魅せる表情も私が一番好きなプリンスで嬉しい。様々な表情を見せるギターにも泣けます。サビの直前に音を減らして、ギターのアルペジオを散らしつつ、多重録音コーラスを重ねるあたりが本当に憎いです。冴えまくってます。

2曲あるバラードはマニアの皆さんからはあまり好かれないシーナ・イーストンとのデュエットの“The Arms of Orion”はまっとうなバラードで面白みに欠ける感じは否めませんが、この頃珍しかったプリンスのまっとうな歌はそこそこ旨味があり、当時毛嫌いして申し訳なかった。

でも、やはり最高なのは“Scandalous”ですよね。シンセを重ねることで産み出される滑らか過ぎるグルーヴ。これはもう時代を30年先に行っていたと言ってもおかしくありません。不協和音の混ざり方を含め、今どきのUSブラックの若人が出してきてもおかしくない音です。今回一番驚いたのはこの曲かもしれません。当時、キム・ベイジンガーがフューチャーされたミニアルバムを(別の意味で)熱心に聴いていましたが、あのアルバム、どこに行ったのでしょう?これはまた入手し直さなくてはなりません。
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当時、噂にもなりましたよね、この二人。

ということで、驚きの内容。本当の天才の音楽はリアルタイムでは私のような凡人には分からないことが多いわけですが、これは最たるものでしょう。当時の安易な思い込みと決めつけ。当時の私に小一時間説教したくなりますね。しかし、こうなるととですね、もしかするとこれもちょっとしか聴いた記憶がない≪Graffiti Bridge≫なんかの再評価を行ったほうがいいかもしれませんね。それどころか、迷作で有名なあの2本の映画なんかも素直な心でもう一回渡来したほうがいい気もしてきましたが、さすがにそれは厳しいかな。
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ああ、それにしても私はプリンスが大好きだ!

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by zhimuqing | 2018-01-08 23:28 | Funkentelechy | Comments(2)
Commented by やました ex M.A. at 2018-01-13 16:45 x
ご無沙汰です!
「プリンス死んでないもーん病」はようやく治ってきましたよ(笑)

しかし亡くなったおかげでなんぼでも観れるyoutube、皮肉なもんですね。
それらを堪能するにはまだ胸がチクチク痛いのですが、
ケーブルTVでドキュメンタリー「スレイヴ・トレード」を観て今更ながらプリンスの預言者っぷりに感動しました。
もしかしたらアメリカ大統領トランプを見ることなく逝って幸せだったかな……
たまたまツイッターに流れてきた、晩年のプリンスとオバマさんの娘さんが踊る姿を見てそう思わずにいられませんでした。
Commented by zhimuqing at 2018-01-14 19:35
>> M.A.さま

うぉー!MAさん、大復活!今年一番の喜びです!(まだ始まったばかりですが)あ、そうそう、コメントですが、承認制に変えているので、コメント入りづらくなっております!すみません!

スレイヴ・トレード!?なんじゃらほい!と思って調べてみると、WOWWOWだったんですね!これは他でもひること出来そうなんで、何とかしなければ。そうそう、私が見たいのは、80年代の時のバンドメンバーなんですけど、それはなかなか出てこないですね。さすがにまだ言葉にならないのでしょうか?レヴォリューションズだけでなく、ミーコとかグレゴリーとかリーズとかリーヴァイとか。

ドキュメンタリーと言えば、昔化していただいたBBCのドキュメンタリーがタイ航空の機内のシートプログラムに入っていたことに激しく感動しましたが、中々この感動を分かち合える人がいなくて困りましたよ。

Youtube、好き放題に観ることが出来るようになり、ありがたいのはありがたいのですが、やや残念な気持ちになるのはなぜでしょう。

ということで、長文になってしまいますね。またそのうち是非とも!ということで、ではでは!
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