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ハードル、高いよね

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ウエストバウンド時代のファンカデリックの音源をデトロイト・テクノのアーティストがリミックスするというアルバム。LPで欲しかったので、ネットで色々検索して一番安かったアメリカのサイトより購入。時間がかかるのが難点ですが。
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盤面もウエストバウンド仕様で嬉しいではありませんか!

それにしても名盤、名曲のリミックス、やっかいな仕事ですね。原曲に忠実すぎて音をあまりいじらないと面白みがないとか、原曲がカッコいいのでそりゃかっこよくなるよねと言われてしまう。いじり過ぎると、原曲の良さが台無しだとか旨味が無くなったとか言われてしまう。どっちに転んでも何だかうまく行かないような・・・。カバー曲というのも難しいものですが、ハードルの高さはその比ではないような気がします。カール・クレイグやセオ・パリッシュ、ワジードがこのプロジェクトから結局辞退したというのも頷けます。(でも、そのことをライナーに書いちゃうってのはどうなんでしょう。良いのか、お前さんの辞退のこと、書いちゃうぞ、それでもいいのか?いいって言ってるでしょう、俺のはダメだったんだ、みたいな会話があったのでしょうか?)

ま、実際問題、この時期のファンカの音源を使うと、どうしてもカッコよくなってしまうのは仕方がない。十二分に敬意を払うは当たりまえ。どんな音を付け加えたのか?は、センスが非常に問われるところ。対象がもう足すものも引くものもほぼない音楽なのでなおさら。そのうえで、鬼火のようとも黒魔のようともいえるPファンクというかジョージ・クリントンの宇宙に敷き詰められるダークマターあるいは精霊の芳香をいかに高濃度で表出させられるか?が勝負の分かれ目。そしてそこに新しいテクスチャーを違和感なく盛り込めるか。リミックスというのは本当に恐ろしいものです。

バックのトラックを取っ払って歌の旨味を抜き出し、“Do That Stuff”に重ねてみた“You Can't Miss What You Can't Measure”はアイデア一発ではありますが、クリントンの特性が露わされたようで私の好みです。もっと言えば、さりげなく原曲の旨味成分を引き出したMoodymannの“Cosmic Slop”は流石のセンスだと思います。こういう音、今のクリントに求めたいのだけど、やっぱり難しいのでしょうか?ベースをブーストしてビリー・ベースのセンスを表に出した“You And Your Folks”にはダブ風味があるけど、もっとダブ度を増したほうが面白かった気も。
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みんな大好き、ムーディーマン!

皆さん、やっぱりエディ・ヘイゼルに敬意を表したのか、あまり切り刻まずに、そのままソロを流すパターンが多かったのもやや意外。もっと断片化したヘイゼル成分をPCRにかけたように増幅する人が多いのかと予想していました。とは言っても、ヘイゼルのギターはやっぱり本当に魅力的過ぎて、素材として100点満点の1億点ぐらいなので、そのまま乗っけてしまう気持ちはもう大いに分かります。かっこよすぎますからね。バーニーのシンセについてもほぼ同じ。

ティキ・フルウッドやジェローム・ブレイリーの特徴的なドラミング、それがビリーやブギーやブーツィーやバーニーに絡み合った時に生まれるダイナミクスはPファンクの大きな魅力の一つであるわけですが、その核心にもうちょっとトライした曲があっても良かったかもしれない。昨年のチャイリディッシュ・ガンビーノのアルバムはそこに挑戦して成果を出していたし。もちろんリミックスしているアーティストはデトロイト・テクノの人達なので、そのこだわりというのも理解できるのですけどね。

そういう意味では、四つ打ちのバスドラに中途半端な打楽器の音を乗っけた“Standing On The Verge”はやっぱり私の好みではないかな。アンプ・フィドラーの手がけた“Let's Take It To The Stage”も趣向は同系列なんだけど、早回しになったクリントンのジャイブトークがどことなくカミール(カミーユ、言わずと知れたプリンスのアルターエゴですね)を思い起こさせるのが面白いし、フィドラーによる上書きされたムーグ(かな?)のソロもあるし、こちらのほうがずっといい!その系列では、リズムパターンをぎくしゃくしたものに置き換え、更に80年代のクリントン諸作の成分をまぶしてみた“Be My Beach”が私の一番の好みかな。もっと一気に“Atomic Dog”に寄せたURの“Music 4 My Mother”も面白いです。
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美味しいところには必ず登場、アンプ・フィドラー。いや、逆ですね。この人を呼べる説得力がある試みが面白いというだけ。

ま、そんな感じで、一言で言うと盛り上がります。お勧めできます。ファンカデリックが猛烈に聴きたくなるという効果?もあります。ワジードとかパリッシュの作った音も正直聴いてみたい。1曲だけデトロイトのロックバンドThe Dirtbombsによる“Super Stupid”のカバーがありますが、ソニー・シャーロックみたいになるギターはかっこいいですが、これは外しても良かったかもね。というか、漆黒のPファンクトリビュート盤、そろそろ作られてもいいんじゃない?Dとかサディークとかカマシ・ワシントンとかクエストとかバドゥとかクリス・デイヴとかトニー・アレンとかガンビーノとかンデゲオチェロとかチャーリー・ハンターとかその辺をみんな集めて。
by zhimuqing | 2017-12-05 00:28 | Funkentelechy | Comments(0)
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