それにしても名盤、名曲のリミックス、やっかいな仕事ですね。原曲に忠実すぎて音をあまりいじらないと面白みがないとか、原曲がカッコいいのでそりゃかっこよくなるよねと言われてしまう。いじり過ぎると、原曲の良さが台無しだとか旨味が無くなったとか言われてしまう。どっちに転んでも何だかうまく行かないような・・・。カバー曲というのも難しいものですが、ハードルの高さはその比ではないような気がします。カール・クレイグやセオ・パリッシュ、ワジードがこのプロジェクトから結局辞退したというのも頷けます。(でも、そのことをライナーに書いちゃうってのはどうなんでしょう。良いのか、お前さんの辞退のこと、書いちゃうぞ、それでもいいのか?いいって言ってるでしょう、俺のはダメだったんだ、みたいな会話があったのでしょうか?) ま、実際問題、この時期のファンカの音源を使うと、どうしてもカッコよくなってしまうのは仕方がない。十二分に敬意を払うは当たりまえ。どんな音を付け加えたのか?は、センスが非常に問われるところ。対象がもう足すものも引くものもほぼない音楽なのでなおさら。そのうえで、鬼火のようとも黒魔のようともいえるPファンクというかジョージ・クリントンの宇宙に敷き詰められるダークマターあるいは精霊の芳香をいかに高濃度で表出させられるか?が勝負の分かれ目。そしてそこに新しいテクスチャーを違和感なく盛り込めるか。リミックスというのは本当に恐ろしいものです。 バックのトラックを取っ払って歌の旨味を抜き出し、“Do That Stuff”に重ねてみた“You Can't Miss What You Can't Measure”はアイデア一発ではありますが、クリントンの特性が露わされたようで私の好みです。もっと言えば、さりげなく原曲の旨味成分を引き出したMoodymannの“Cosmic Slop”は流石のセンスだと思います。こういう音、今のクリントに求めたいのだけど、やっぱり難しいのでしょうか?ベースをブーストしてビリー・ベースのセンスを表に出した“You And Your Folks”にはダブ風味があるけど、もっとダブ度を増したほうが面白かった気も。 皆さん、やっぱりエディ・ヘイゼルに敬意を表したのか、あまり切り刻まずに、そのままソロを流すパターンが多かったのもやや意外。もっと断片化したヘイゼル成分をPCRにかけたように増幅する人が多いのかと予想していました。とは言っても、ヘイゼルのギターはやっぱり本当に魅力的過ぎて、素材として100点満点の1億点ぐらいなので、そのまま乗っけてしまう気持ちはもう大いに分かります。かっこよすぎますからね。バーニーのシンセについてもほぼ同じ。 ティキ・フルウッドやジェローム・ブレイリーの特徴的なドラミング、それがビリーやブギーやブーツィーやバーニーに絡み合った時に生まれるダイナミクスはPファンクの大きな魅力の一つであるわけですが、その核心にもうちょっとトライした曲があっても良かったかもしれない。昨年のチャイリディッシュ・ガンビーノのアルバムはそこに挑戦して成果を出していたし。もちろんリミックスしているアーティストはデトロイト・テクノの人達なので、そのこだわりというのも理解できるのですけどね。 そういう意味では、四つ打ちのバスドラに中途半端な打楽器の音を乗っけた“Standing On The Verge”はやっぱり私の好みではないかな。アンプ・フィドラーの手がけた“Let's Take It To The Stage”も趣向は同系列なんだけど、早回しになったクリントンのジャイブトークがどことなくカミール(カミーユ、言わずと知れたプリンスのアルターエゴですね)を思い起こさせるのが面白いし、フィドラーによる上書きされたムーグ(かな?)のソロもあるし、こちらのほうがずっといい!その系列では、リズムパターンをぎくしゃくしたものに置き換え、更に80年代のクリントン諸作の成分をまぶしてみた“Be My Beach”が私の一番の好みかな。もっと一気に“Atomic Dog”に寄せたURの“Music 4 My Mother”も面白いです。 ま、そんな感じで、一言で言うと盛り上がります。お勧めできます。ファンカデリックが猛烈に聴きたくなるという効果?もあります。ワジードとかパリッシュの作った音も正直聴いてみたい。1曲だけデトロイトのロックバンドThe Dirtbombsによる“Super Stupid”のカバーがありますが、ソニー・シャーロックみたいになるギターはかっこいいですが、これは外しても良かったかもね。というか、漆黒のPファンクトリビュート盤、そろそろ作られてもいいんじゃない?Dとかサディークとかカマシ・ワシントンとかクエストとかバドゥとかクリス・デイヴとかトニー・アレンとかガンビーノとかンデゲオチェロとかチャーリー・ハンターとかその辺をみんな集めて。
by zhimuqing
| 2017-12-05 00:28
| Funkentelechy
|
Comments(0)
|
検索
以前の記事
2024年 03月 2024年 02月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 カテゴリ
全体 Funkentelechy U GOTTA FRIEND Blues 4 Terapin On The Corner Make Me Wanna Holler All The Kings Men BOP GUN Mickey's Monkey Job Hot Barbeque Rumba DE Manbo! Change! Starship Troopers La Sombra Del Viento A Felicidade Open the gate Dawn 'n' Shine Popper's Delight KUNG FU MEETS THE DR FOOL OF APRIL Chega de Saudade 未分類 外部リンク
記事ランキング
画像一覧
|
ファン申請 |
||