ムスメが通っているプールの近くにあるハードオフにLPが置いてあることは先日報告したばかりですが、土曜日にムスメをプールに送って行くとどうしても寄ってみたくなるので、これは大変に良くないぞと考えながら、またもやお店でいろいろ漁る羽目に。漁ると言っても先日散々チェックした後なので、そこに何があるか、いくらで置いているかは明確なわけで、今回のお目当てはこの盤だったのです。
それにしても目鼻立ちが整った男前な若いころの苦心シー・ジョーンズ。≪Walkingin the Space≫、クインシー69年のアルバム、税込524円。ローランド・カーク参加作というのが購入のポイント。69年という事で、カークは既にアトランティックで猛進撃を行っていた時期なもんで、カークのマーキュリー時代の音源を網羅=クインシーへのゲスト録音もほぼ網羅されているあのボックスセットにもこのアルバムの音源は入っていなかったのです。
クインシーは売れていない時代からカークを高く買っており、要所要所でカークを起用。一番あたったのは言うまでもなく“Soul Bossa Nova”。ただクインシーの音楽は全体のアンサンブルやアレンジの妙。そんなわけで、どのアルバムでもはっきりとカークの痕跡を探すのはなかなか至難の業。アルバムのクレジットによれば、ホーンセクションとして全曲に参加している他には、ソロを取るのはA2でのテナーのみ。フルートソロは全てヒューバート・ロウズとのこと。なのですが、じっくり聴いてみると全編フルートがまぶされるB4の“Oh, Happy Day”の中盤の声少し混ぜフルートはカークのような気がします。
クインシーのアルバムですので、このアルバムも聴きどころはメロウ極まりない音像。滑らかな音にくるまれるという言葉が一番しっくり来るかな。ソロイストのソロもあくまでも滑らかに滑空するようなものばかりで、カークがそこをぶち壊しても面白かったのではないかと思うのですが、クインシーが求めているものはそこではなかったのでしょう。というか、コテコテな芸人としてというより、純粋なリードプレイヤーとしてカークのことを評価していたということなのでしょう。ちなみにカークがゲストあるいはグループの一員として複数のアルバムに参加したミュージシャンはクインシーを除くと、ミンガスのみ。その辺もカークとクインシー、お互いに敬意を表しているようで、なかなか熱いものがありますね。
他の演奏陣は豪華そのもの。ヴァレリー・シンプソンもいい歌うたっていますが、アルバムの主役はリズム隊。ドラムがグラディ・テイト、ベースはレイ・ブラウン(なんとエレキベース)、ギターはエリック・ゲイル、ピアノはボブ・ジェイムズ、ハーモニカでトゥーツ・シールマンス。ひたすらリッチに耳心地よく、でも裏でこっそりしぶとい職人技を豊富に、聞かせてくれるわけです。個人的には、エレキを弾くレイ・ブラウンが興味深いところです。ウッドベースの人ならではの空間の使い方、フレーズの叩きこみが気持ち良いです。
そんな中、やっぱり目立つのはB2で登場するバーナード・パーディー。ベースはクレジットによると、レイ・ブラウンが弾いたベースの上にチャック・レイニーが必殺技のフレーズをかぶせたことになっているけど、私にはもっとレイニー比率が高いように思いますね。クレジットではレイニーが弾いていないことになっているB4についても途中でテンポアップした部分はレイニーではないかと睨んでいるのですが、どうでしょう。もっともレイ・ブラウンのエレキでの演奏をほとんど聴いたことがないので断定にまでは至らないのですが。
ま、個人的にはパーディーにはレイニーかジミー・ルイスが最も合うと思っているので、このコンビの音が出てくると、しっくりくるというか安心するというか、まあそんな感じですね。それにしても、少しずつ自分のあの得意フレーズをちりばめていくパーディーはやっぱりいい、燃えます。
ということで、今回のLP、524円は満足。クインシー関連ではアイアンサイドのテーマの12インチがあったようななかったような。あと残る狙い目はミンガスとドルフィーぐらいで打ち止めの予感。そうそう補充はないだろうし。でも実はもう一枚ポップなものを買っていたりもするのですが、それはまた今度。