流石の鋭さですね

坂本慎太郎の待望の新作≪できれば愛を≫は
またしても大傑作ですね。
何度もリピートし続けてしまいます。
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実は第一印象はマルコス・ヴァ―リ。
70年代のODEON諸作を思い出しましたね。
メロウなのにどことなく歪というかストレンジな空間、
かなり似たテクスチャーなのではないでしょうか?

音が猛烈に良く、ここは前作と一番違う部分かな、と。
弦のたわみ、太鼓の皮やアンプのコーンの揺れまで
全部閉じ込めようとしたような音。
適度にデッドで、バランスが良くて
私が猛烈に好むところの音ですね。
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演奏は過去の2枚よりもずっと躍動感に溢れていますね。
スチールギターを含めギターのソウルフルなことよ。
隙間を活かしまくりつつ、随所に現れるフルートや
シェイカー、マリンバのソロ等も素晴らしい。
シンバルを徹底して使わないドラムは
ファンキーなエッセンスのみで構成されていて、
私なんかはジガブーすら想起させられるのですが、
どうでしょう?
ドラムの菅沼雄太は最近カセットコンロスの和田マンボと一緒に
WADA MAMBO HIGHLIFE SPECIALというバンドをやっているそうで、
早いところ見ておかないとダメな感じがします。

歌については過去の作品では結構ダブルというか、
リードを重ねて録っていたように思いますが、
女性コーラスを多用しつつも、重ねていないものも多く、
より生々しさが出ているかな。
生々しさというと、今回もたくさん出てきます、ロボ声。
歌っている本人の声を変えているのだけど、
表情がなくなることで、地声よりもソウルフルだし、
地声の生々しさをより際立たせているという
ロジャー・トラウトマン効果がここでも発揮されています。
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で、やはり歌詞ですよね。
前作程ではないけれど、やはり強烈に今の日本を風刺したもの。
参院選や都知事選後の状況を見据えたかのような歌詞は
相変わらずの鋭さですが、ダブル(トリプル)ミーニングもあるようで、
まあその辺は聴き手の想像力に任せるという感じなのでしょう。
坂本慎太郎自身はハッピーなアルバムを作ろうとしていたのに、
途中でそうでないことに気づいてしまったとのことですが、
社会というか世の中の空気に体の細胞が反応してしまう、
憑依してしまう体質なのでしょう。

今の社会の風潮に対する強烈な違和感を表明した曲が多いけれど、
前作に比べるとポジティブな曲が多いかな。
負けてもまだ前に進めるぞという前向きな“死にませんが?”、
市井の人々に対してエールを送りつつ、
今の流れを変えるぞという“鬼退治”、
多様性も持つことの素晴らしさに触れた“ディスコって”もある。
ちなみに今日現在のベストは“できれば愛を”か“鬼退治”か
ラストを飾る“いる”かな。でもすぐに変わりそう。
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自分が聴きたいと思う音楽は永久に作れないと思う、と
本人は言っているそうですが、まあそれはそうだとしても、
ここまで聴き手の想像力を掻き立てる音を作れる人も
ほとんどいないわけで、同時代にこの人といることを
感謝するしかないなぁ、と思いつつ、
また頭からアルバムをリピートしてDに影響を受けたカエターノみたいな、
あのドラムでまた悶絶するのですね。
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by zhimuqing | 2016-08-05 00:28 | Funkentelechy | Comments(0)
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