遂に出土!

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44年ぶりに発掘?いや出土といったほうがいいですね、
The Fantastic Fourの幻のセカンド≪How Sweet He Is≫。
品番(Soul SS-722)まで決まっていたこのアルバム、 
イギリスの名編集盤≪Ceraful・・・≫シリーズでも小出しにされていたし、
エドウィン・スターの1stは大量の初期のシングルと一緒に再発されたし、で
もしかしたらという期待に胸を躍らせていたのですが、
こうやって発売されると、感慨深いものがありますね。
何せ私が産まれる数ヶ月前に発売が予定されていて、
44年ぶりにようやく発売ですからね。
セミの幼虫だって、ここまで長い間土の中に潜っていません。
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今回発売されたのは元々予定されていたアルバムの12曲に加え、
未発表の13曲を加えた全25曲。
はっきり言って、いやはっきり言わなくても大名盤ですね。
このアルバムが71年に発売されていたら、ものの本には間違いなく
モータウンというか、デトロイトを代表する名盤として
大きなコーナーが割かれていたことは間違いなかったでしょう。
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デトロイト屈指の実力派、というか、5本いや3本の指に入る
ファンタスティック・フォーは実力の割には過小評価され続けていると思うのですが、
モータウンというかリック・ティックでのシングルを集めたファーストも
ウエストバウンドから出た4枚のアルバムもどれも高品質、どれも名盤。
歌が上手過ぎるが故の過大評価かな?と勘ぐったりもしますね。
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フィリーの影響を受けた華麗な演奏をバックに吼えるウエストバウンド盤が
世間一般では代表作とされていて、私も≪Alvin Stone≫と≪Night People≫が
豪華カップリングされたCDをかれこれ20年近く愛聴しています。
やはりどちらも代表作の名にふさわしい名盤で、
そのかっこよさが分かりやすくて良いと思うのですが、
最近の私には、演奏がやや手堅すぎる感があるかな。
少しスリルに欠けるような気もするのですね。
歌はものすごいし、完成度も高いのですけどね。
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言っておきますが、SかAかBかと言われると、S級ですからね。

スリルに欠けるというのは、スタイルが完成したことでもあるので、
様式美の世界であるブラックミュージックではそれは悪いことではありません。
が、しかし、やはり私としては、完熟直前の瑞々しさこそを
愛でたいと言う気持ちが強いのですね。
(誰だ、未成熟の果実のほうがいいといっている人は!)
大相撲で言うと横綱に上がる直前の大関が一番魅力的であるのを
思い起こすと分かりやすいかも。(逆に分かりにくくなったかも)
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これもS級です。

まあ、70年代中期のソウルやファンクは成熟期、悪く言えばマンネリ期。
Pファンクを除くと、スティーヴィーもフィリーもJBもサザンソウルもマーヴィンも
それまでに比べるとスリルに欠けているのは全体の傾向なので、
軽くアヴェレージを突き抜けているアルバムを複数出しているだけでも
やはり怪物級の実力としか言いようがないわけですが。

そんなわけで、この2、3年、私がもっぱら良く聴いていたのは
リック・ティックのシングルを集めたファーストのほう。
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若造には味わいの深さが分からない(オッサンにしか分からない、とも言う)、
噛めば噛むほど味わいが増してくる、ものすごいアルバム。
まあ、最近デトロイトものを熱心に聞いていることもありますが、
豪快なジェイムズ・エップスのリード、巧みにサポートするコーラス、
バックのおそらくファンク・ブラザーズによる演奏も歌を徹底的に引き立てる。
これぞデトロイト・ソウルの真髄といっても過言ではないのですが、
華やかさよりも苦味、ポップな勢いよりも滋味が持ち味となると、
やはり少し地味で一般受けは難しいとも思いますな。
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ということで、今回のアルバムになるわけですね。
シングル集に収められたシングル3枚や各種編集盤で出ていた未発表曲が
非の付け所がないほど、素晴らしかったもんで、
聞き手の私のハードルも相当を上げていたのですが、
やっぱり完璧だとしか言いようがありませんな。
聴き進めるうちに大コーフンしてプレイヤーを止めたくなるアルバムは
過去そんなに思いつきませんが、まさにそんな1枚ですね。
(ソロの1枚目、トニーズ3枚目とかD、アルグリーンの08年作とか、そのぐらいかな)

なによりデトロイト最高峰のジェイムズ・エップスのざらついた喉の凄さと凄み。
胸に開いている大きな暗い穴にディープな感情を殺気とともに放り込むラフィンは
ソロ作では聴いているこちらが辛くなることもある(そこもいいのですが)が、
エップスの歌はざらついていても、温かみと柔らかさに満ち満ちていく感じが
他で得がたい味わい。
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モータウンはエップスをソロとして売り出そうとしていたようで、
だからこその≪How Sweet He Is≫というタイトルだし、
このアルバムの中にもモータウンきっての名コーラス専任チームAndantesが
バックを歌っていたりもするのだけど、これは危ういところでしたね。
エップスはやはりラフィンと同じく、コーラスがバックでサポートするスタイルの方が
リードの魅力が映えるところだったことは間違いない。
太っちょの体型と人の良さそうなルックス云々もそうだけど、
それ以上に歌のスタイルがという話です、はい。

シングルで固められたファーストに比べると、
このアルバムは製作サイドから見ると、正直手抜き気味。
他のシンガー向けでバンドの録音が終わっていた曲が5曲、
カバーが3曲(マーヴィン&タミー、ジェリー・バトラー、ビートルズ)。
外様の実力派の例に漏れずモータウンのAリストのプロデューサーの名前は
クレジットにはほとんど見当たらず、モータウンの重視の度合いも分かりますが、
このアルバムに関しては、それが功を奏したかな。
この時期のモータウンのメインアクトに比べると、
変なひねりのない、オーソドックスなノーザンが目白押しで私の理想像ですな。
(1曲だけサイケソウル路線がありますが)
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完熟一歩前の歌いっぷり、曲に対する歌の解釈の深み、
完成直後のファンク・ブラザーズの完璧な演奏、
当時のモータウンの厚みのある録音とミックス。
(ゴールデンワールドでの録音がメインですが)
ボトムがより効いているのがいいし、
何よりも1曲1曲の推進力が素晴らしい。
この時期のモータウンのドラム、ユリエル・ジョーンズとピストル・アレンの凄さは
もっと評価されるべきですよね。まだ過小評価が過ぎますな。
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ライナーノーツにも驚いた旨書かれていますが、未発表曲の13曲も
アルバム曲と比べても全く遜色ないレベルで
やっぱりファンタスティック・フォー、特にジェイムズ・エップスの歌が
デトロイトでも屈指の実力だったと恐れ入るばかりです。
今年はソウルやファンクの再発の当たり年ですが、その中でも屈指の一枚。
まずはイギリスのKENTに最敬礼、スタンディング・オベーションですな。
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by zhimuqing | 2015-07-20 23:28 | Funkentelechy | Comments(0)
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