やはり人柄なのかな?

60年代のデトロイトのマイナーレーベルには凄いシンガーが
ごろごろしていて、私なんかも泥沼にはまった感があるのですが、
きちんとまとめられたブツがないのが困ったところです。
あるにはあるのですが、ほとんどがブートですしね。

先日、といっても数か月前ですが、入手したこのシリーズは
トライ・ファイ/ハーヴェイ・レーベルの全66曲を銀盤3枚に
まとめてしまったという、私の痒い所に手が届くシリーズで大満足。
デトロイトのTri-PhiとHarveyは1961年から63年まで存続した
グウェン・ゴーディーとハーヴェイ・フークアが経営したレーベル。
発売元がTRI-PHI/HARVEYとなっていて、もちろん本家っぽい名称ですが、
それが逆に怪しげな匂いというか、ブート臭さを醸し出していますね。
残念ながらCD-R。
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ただし、中身ははっきり言って極上!
やはりハーヴェイ・フークアの目と耳が効いているのがいい!
流石に元ムーングロウズのリーダー、音に対する感度、感性が違うだけでなく、
音楽を作り出す側としてのポリシーと力量が違いますね。
この時代にありがちな中途半端にポップに色目を使ったがために
結果として魅力がなくなった、というような楽曲が皆無!
曲自体が魅力あるものばかり!というのも素晴らしい。
無名時代のマーヴィン・ゲイを育てた人だけのことはある。

もちろん65年以降のデトロイトものに比べると、
様式としてのソウルな完成度はないものの、当時の黒い音、魅惑的な音を
ドゥーワップやブルース、ジャンプ、R&B、ゴスペル、を巧みに消化して
都会的ではあるものの、洗練されすぎていないので、
味わい深いというか、旨み成分もかなり豊富です。

もう一つ、音がいいことも特筆すべきことでしょう。
他の同時代とそれ以降のデトロイトのレーベルの編集盤に比べると、
しっかりとした厚みがある上に、クリアーな音。
ドの付くマイナーレーベルなので、楽器の数は少ないが、
一つ一つの音の分離がよく、しっかりと聞こえてくる。
レコードでの音は聞いたことがないので、元の音が良かったのか、
それともCD化の際のリマスタリングが良かったのかは、
何とも分からないところですが、CD-Rで流通していること、
よく分からないレーベル名での発売を考えると、
リマスターしたところで大した手間はかけられなさそうなので、
音の良さはフークアの方針と技量の賜物と考えるのが妥当なところですね。
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レーベルのデザインは??って感じですけどね。
その辺は苦手だったのかも。

歌手の中では、後にフークアと一緒にモータウン入りするメンツが
当然のことながら目立ちます。
スピナーズ、Jr.ウォーカー、ショーティー・ロング、ジョニー・ブリストル。
中でも圧倒的なのは、スピナーズですね。
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一部の説では、フークワ自身がリードを取っているとの話もありますが、
大半の曲はボビー・スミスでしょうね、やっぱり。
ボビー・スミスの瑞々しく、制球力抜群のリードがまず魅力的だが、
それに絡むドゥーワップの香りが強く残ったコーラスが
その味わいを更に強化しますね。
実はこの辺を全部まとめた音源(これもブートでしたけどね)を
以前職場のD氏に借りて聴いてはいるのですが、
他の歌手とまとめて聴くと、更に味わいが増す気がするのが不思議です。

ジョニー・ブリストルは全てジャッキー・ビーヴァ―とのデュオ。
サム・クックやベン・E・キング的な温かさを持った曲が中心で、
アコギのストローク中心のフォーキーなバックがあったりもするのですが、
フォークというよりも、ジャメイカのロック・ステディやアーリーレゲエに
非常に近い空気を感じさせるのが不思議です。
とはいえ、その辺は60年代のシカゴソウルなんかの影響の強いわけで、
当たり前だといえば当たり前であるのですけどね。
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ブリストル先生は面影が確かにありますね。

私が好きなショーティー・ロングは成長途中といえますが、
スムーズな歌いっぷりにどこかキャッチ―な何かを確かに感じます。
ジャンプやジャイヴにも通じるブラックポップの肝を掴んでいたのでしょう。
ウォーカーはわりと普通のソウル・ジャズ路線ですが、
アーシーかつ人懐っこいオヤジ体質が全開ですな。
両者ともモータウン入社後のほうがやはりキャッチーですけど、
この時点での垢抜けなさは、それはそれで貴重というか愛すべきというか、
聴いていて楽しくなるのは間違いないですね。
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ショーティー・ロングは本当にいい人っぽい。

エディ・バーンズはデトロイト土着?のブルースマン。
ジョン・リー・フッカーの子分として有名な人ですが、
このトライ・ファイでの録音は、ギターと歌がバーンズ、
ペットがショーティー・ロング、ピアノがポップコーン・ワイリー、
エディ・ウィリスとロバート・ホワイトがギターということで
これはほぼファンク・ブラザーズではないか?ということですが、
ドラムはなんとマーヴィン・ゲイ!
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先日書いたように、マーヴィンはフークワの弟子にして義兄だし、
初期のモータウンでもドラムをよく叩いているので、
まあ不思議でもなんでもない流れではあるのですが、
その情報だけで有難みが増してしまうところが、我ながら情けない。
ちなみにスピナーズでも叩いているとのことで、
もしかするとマーヴィンがドラムを叩いている曲はもっと多いのかも。

ちなみに、このレーベルは女性シンガーがかなり良い。
名前が通っているのはアン・ボーガンの一人のみ。
その他の女性歌手はトライ・ファイでのレコード以外の経歴は不明で、
当時のデトロイトの業界について書かれた本≪Groovesville USA≫の
歌手リストにもそれぞれトライ・ファイとだけ書かれているだけですが、
どのシンガーの実力派なので、そのまま埋もれてしまったとは
どうにも信じがたいものがありますね。
知られていないだけで、名前を変えてレコード残しているはず。

個人的に気に入っているのは、Lorri Rudolphですね。
艶やかなパンチ力、気が強そうな色気、一本気な立ち振る舞い、
そんな魅力を兼ね備えた、教会直送のいいオンナぶりで、たまりませんな。
個人名義とジョー・チャールズとのLoe & Joe名義でのシングルが
それぞれ1枚ずつあるのみですが、どれも見事な歌いっぷり。
モータウンでのきらびやかなバック、アシュフォード&シンプソンの曲で
華麗に歌うのが聴いてみたかった。

アン・ボーガンはグラディス・ホートンの後釜でマーヴェレッツに加わり、
その後ラブ・ピース&ハピネス、ニュー・バースのメンバーになったという
結構な経歴を持つナイスな歌手ですが、この時代はChallangers Ⅲ名義と、
フークアとのデュオの計3枚ですが、キャラがすでに立っていたのでしょう、
Featuring アン・ボーガンとの表記がありますね。
ロリ・ルドルフよりもややハスキーでもう少し落ち着いた声ですが、
その分推進力があって、ドスが効いていて、これはこれで魅力的だなぁ。
歌手としての実力はルドルフよりもやっぱり上でしょうね。
マーヴェレッツ加入時はグループ自体の衰退期だったので、
魅力が十分に発揮できていなかった気もするのですが、
もう一度後期マーヴェレッツを聴き直してみることにしましょう。
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Challengersの写真、あるところにはあるもんだ。

二人に比べるとダヴェンポート・シスターズはもう少し古い感覚で
R&Bやゴスペルに近い感覚がより濃厚ですが、それはそれで魅力的。
アーヴィン・シスターズは声質のよく似た二人が一緒に歌う、
なかなか可愛らしい曲。もしかして双子かな?

フークワ自身の歌う曲は結構愉快なとぼけた曲調が多く、
ボーガンとのデュエットやスピナーズをバックに歌うものも含め、
売れ線狙いというよりも、本人も楽しんで歌っている感じがありますが、
それは多分にこのレーベルの音全体にも言えることで、
聴いていてなんだか楽しくなる音。
これはもう、フークワ本人の人柄の表れとしか思えない。
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そういえば、アン・ボーガンも結構長く面倒見ていたし、
マーヴィン・ゲイだって最後にはフークワに頼っていたわけだし、
晩年はスモーキーのゴルフ仲間だったというそうだし、
やっぱりいい人だったんでしょうね。
もう少しフークワの研究を進めてみなくては。
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by zhimuqing | 2015-01-26 19:28 | Funkentelechy | Comments(0)
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