それぞれの理想形

エドウィン・スターの68年のシングル“25 Miles”は
スターの代表作“War”に比べると、あまり語られる事がない曲だが、
この人はファンク路線よりもノーザンでこそ映えると思う私には
この曲の方がずっと燃えるのでありますね。
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ジョニー・ブリストルとハーヴィー・フークワが書いたこの曲、
初めて聴いた時にはウィルソン・ピケットの“Mojo Mama”にそっくり。
そちらにはジェリー・ウェクスラーとジェリー・バーンズのクレジットが。
しかも発表は67年でこちらが先で???ってな感じですが、
実は"Mojo Mama"にも"32 Miles out of Waycross"というオリジナルがあり、
ジェリー・ラゴヴォイとバート・バーンズのペンによる曲だということで、
当時のクレジットの適当さというか、業界の思惑等のモロモロが伺えます。
ラゴヴォイが外れてウェクスラーの名前が入るというところとかね。
ちなみに"25 Miles"は後にラゴヴォイとバーンズのクレジットが加えられ、
90年代以降のサンプリング騒動の元祖のような感じもありますな。

それにしてもNYとデトロイトとマッスルショールズ、
ブリストル、フークア、スター、ウェクスラー、ピケット、バート・バーンズ、
60年代ソウルのホットスポットと錚々たる面々が入り乱れる関係、
後追いの私にはかっちり地域ごとに分かれていた印象を受けるのですが、
さすがに同時代ではかっちりと色分けできるものではなく、
それぞれ影響を与えあっていたのだなと、改めて気づかされます。

オリジナルを歌ったホーギ―・ランズについては全く知りませんが、
エドウィン・スターとピケットと比べられるというのは
同業の歌手としてなかなか痺れる状況だったのかな、と。
歴史に残る歌手、言ってみればレジェンドですもんね。
エドウィン・スターとピケットのそれぞれの曲を聴き比べると、
男の純情熱唱系という二人の共通点があるだけに、
音や曲の作り、バックの音やフレーズの組み合わせに特色が出ていて
聴いていて飽きないですね。

ピケットのほうは完全に典型的なマッスルショールズの音。
なんといっても土煙が舞うようなロジャー・ホーキンスのドラム、
ホーキンスのハイハットとスネアに寄り添うスプーナーの鍵盤は
曲のツボを的確に押す、というか、ツボだけを押しているような演奏。
ギターはチップス・モーマン?ジミー・ジョンスン?のどちらでしょう?
キレ具合が田舎のコヨーテよりも凶暴な雄鶏みたいでカッコいい。
まあ、サザンソウルの手本となる文句なしの一曲。
全盛期ど真ん中のピケットとこれまた全盛期に入ったフェイムの音。
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黒豹とオールダム先生。
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これは文句なしの大名盤!

一方のエドウィン・スターの“25 Miles”はどこからどう切っても
60年代後期のデトロイト臭が漂う、これまた見事なノーザン・ソウル。
ピケットの曲と1年の差しかないが、圧倒的に都会的というかモダンな感触。
何といっても右チャンネルメインで入っているドラムがカッコいい。
というか、歌とドラムだけで曲の95%が出来ているようなもの。
途中のブレイクは悶絶もので、その部分だけでも価値がある。
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ユリエルさま!

JBだと67年がCold Sweat、68年がI Got The FeelingにSay It Loud、
JBのファンク革命に気を配っていることがよく分かりますが、
ユリエル・ジョーンズのドラミングは本当にカッコいいね。
固めのわりとかっちり締まったハイハットの音、タム、
やや高めにチューニングされタカトコとフレージングの締めに回されるタム、
そういうモータウン印をJBが開発したファンキーなドラミングと
うまく混ぜ合わせて発展させている。
この辺の感覚が更にティキ・フルウッドなんかに繋がっていくのだな。
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スティービーやテンプス達と。
ユリエル様はオーティス・ウィリアムズの後ろの人ですね。

冒頭のエドウィン・スターの呼びかけに答え、フットストンプの音が入る等
この曲はなかなか楽しい作りでもあるのですが、ジョニー・ブリストルによると
華やかなコーラスはオリジナルズとスピナーズの混成だそう。
なんという豪華なメンツですが、フットストンプの音もその面々が
スタジオで踏み鳴らしているのかと思うと、楽しさも倍増するというものだ。
ホーンのアレンジはピケット版に習ったアレンジですが、
トップからボトムまでかっちり表に出てくる録音がモータウンな感じ。
中音域が強調された、どちらかと言えばまろやかなフェイム録音と違いますね。
フレージングの重さからベースはボブ・バビットかな。
ギターは薄すぎて判別不可能、オルガンとピアノはヴァンダイク?
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ユリエル様とヴァンダイク、ロバート・ホワイト。

エドウィン・スターは歌手としてはピケットのほうがだいぶ上ですが、
力瘤の入れ方、シャウトの挟み方がジョーンズのドラムにぴったりフィットして、
ノーザンソウルのこれまた一つの理想形かと。
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ジュニア・ウォーカー等と重複しますが、ワルというよりもひたむき、
ここでも男の純情というか、そういう感じのほうがずっと強いかな。
やっぱりノーマンのファンク路線よりは、ノーザン・ストンパーだな。
同名のアルバムには流石にこの曲を上回るものは入っていませんが、
他の曲も当然悪いものではないし、今だったら1000円だし、
持っていない人はやっぱり入手しといたほうがいいでしょうね。
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by zhimuqing | 2015-01-07 00:28 | Funkentelechy | Comments(4)
Commented by sawa at 2015-01-07 23:38 x
どーもです.

"25 miles" の作曲,Harvey Fuqua はなんとなく憶えていましたが,Johny Bristol まで絡んでいたとは.
カッコヨイ曲ですよね.マゴノシーンさんのような深い知識も耳もないので,細かいところまではわからないのですが.

自分でも過去に取り上げた気がして…
探してみたらありましたよ.
http://eldritch.jugem.jp/?day=20100708
もう一度取り上げてみようかな.

Commented by zhimuqing at 2015-01-08 00:04
>> sawaさん

こんばんわ!

25 MILESは文句なしにかっちょいいっですよね。
はっきり言って、ブリストル&フークアの仕事に駄作無しって感じです。
ブリストルは一時期フリーソウル関連でブームになりましたが、
主に70年代に光が当てられ、モータウン時代の素晴らしい仕事ぶりは
あまり顧みられていないような気がしているのですよ。
極私的ブリストル・ベスト選モータウンイヤーズみたいなのを
やってみようと色々漁っている最中ですが
モータウンの黄金時代は他にも凄い人ばかりなので、
一向にはかどらない上、今回の流れでピケットが聴きたくなってしまい、
更にとっちらかっている始末です。
年内にでも紹介できればっ!
Commented by sawa at 2015-01-08 05:21 x
Bristol & Fuqua,なるほどぉ.

>>ブリストルは…主に70年代に光が当てられ
ワタシもそちらで知ったクチです.

>>極私的ブリストル・ベスト選モータウンイヤーズみたいなのを
楽しみにしています.勉強させてもらいます!
Commented by zhimuqing at 2015-01-11 01:08
>> sawaさま

返信が何故か消えていることに気が付いたので、とりあえず。

モータウン関係は色々プロデューサーやライター別にまとめてみたくなるのです。
H=D=Hなんかはよくあるのですが、スモーキー曲集とか
ゴーディー選、ミッキー・スティーヴンス選なんかも
色々やってみたいのですが、時間がないっすね。

ということで、そのうちにでも!
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