天才の業ははかりしれない

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フィードバック音、スライドしてスラップでオクターブ、ハンドクラップ、リンドラム。"Ain't That Easy”の冒頭30秒で勝負があったとするのが妥当でしょうね。しかも続く"1000 Deaths”への連続波状攻撃。ギラギラと黒光りするアダマンチウム合金の音塊だけで出来ているような、この新作はまったく素晴らしいとしかいいようがない。
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00年代最高のアルバムだった前作≪Voodoo≫から14年、待望のアルバムではあるのだけど、では、その≪Voodoo≫を骨の髄まで私はしゃぶり尽くせたのか?というと、実はそんなことはなく、2014年12月の現時点でも聴くたびに新しい発見があるのですね。まあ、水面から図り知れない深さを存分に味わうだけの時間をこの男は与えていたのだ、ということなのでしょう。それにしても、このタイミング、この音、タイトルが≪Black Messiah≫、天才の業はやはり底知れない。
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12曲からなる新≪Black Messiah≫、実は事前に音源が流出したり、向こうでのライブ音源がちょくちょくネットで出回ったりしていたので、うち6曲は既に耳にすることが出来ていたもの。元々はアルバム≪James River≫として準備されていたもの。(「新曲」で収録されなかったものも複数あるというか、70曲あるらしい)なので、先にネットで配信された時(CD発売まで我慢したのだ)に曲目見たときには、正直期待しすぎてはいかん、と思っていたのですが、それを軽々上回る、うれしすぎる誤算。

ネイション・オブ・ムスリムのカリド・アブドゥル・ムハンマドの演説とクエストラヴ(ですよね)のドラムを重ねた"1000 Deaths"でのファンク度の急上昇、頭に弦を重ねた"Really Love”も手持ちの流出音源とはあまり変わっていないのに、感情の深みが猛烈に深まっているし、この変貌ぶりには本当に驚きました。音を流出させたクエストラブが当時Dから怒られたというのも良く分かります(笑)。
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楽器の重ね方、演奏の充実度、豊潤な音塊といった差もあるのだけど、何より歌自体の強度、Dが重ねたコーラスを含め、そこが大きく違う。そういう意味でもまずはヴォーカル・アルバムなのでしょうね。

教会発デトロイト・ソウル経由でPファンクが濃縮させた声の精霊成分、実は後発のファンク・グループの多くが真似できなかった部分なのですが、それを自己のスタイルとしてきっちり落とし込んだのはプリンス。そのプリンスのスタイルをもう一度教会で培養したというか、むしろ教会の精霊に食べさせたといったほうがいいのかな、そういう筋肉のしなりを感じさせる歌が実に素晴らしい。

しかも声を発する際の喉の圧縮力(これは殿下を大きく上回る)、そして緊張と弛緩を自在に操るめくるめくテクニックでもって、抜群の駆動力を誇る演奏と巧みに駆け引きを繰り広げるのだから、これはもうアンギラスの運動能力を兼ね備えたキングギドラが広げた羽で獲物を包み込むようなもので、何を言っているか分かりませんが、まあ、それぐらい凄いということで、近年のR&Bの音に不満を覚える人々の快哉を呼んでいるのもまったく良く理解出来るわけですね。(もちろん私もその一人です)
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≪Voodoo≫はソウルトロニックス、チャーリー・ハンター、サディーク、そしてほぼD単独の実は4つのセッションから出来ていて、微妙な色合いの差があったのだが、今回はあまり色合いの差は感じないかな。あくまでも今のところは、ですけどね。

復活以降、一緒にツアーをやってきたメンバー中心の音作りかな、と。バンド名もテスティモニーから知らないうちにヴァンガードに変わっていて、アルバムの参加メンバーは明記してあるけど、曲ごとのクレジットが不明確なのがこれまた世界各国のフリークをもやもやさせていることでしょう。(もちろん私も)

肝になっているのは間違いなくピノ・パラディーノのベース。スライの好きそうなアクセントをつけたフレージングなんだけど、MPC由来のリズムのズレが生むグルーヴ感覚を再現するかのようなタイム感がさらに研ぎ澄まされて、本当に聴きモノ。同時にレゲエやダブのタイム感にも近づくのが面白い。もちろんD自身が弾いているベース、たとえばM2、もしかしたらM8も?、との比較も面白いですね。
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ドラムはクエストラブとクリス・デイヴ、ジェイムズ・ギャドソン!の豪華3枚だけど、ビックリのギャドスンは私の知っているギャドスンのドラミングとやや印象が違うけど、クレジットがある"Sugah Daddy”では噂ではキックだけ生音で、パッドを後から重ねているとの噂で、納得ですね。この曲でのパラディーノとのコンビネーションは素晴らしい。

音色やタイム感からクリス・デイヴは"Prayer”とか"Till It's Done”かな?と思いますが、先ほどのサンプリングのズレを更に進化させた、複数の音源をサンプリングした時のポリリズム感を再現したかのようなドラミングが凄い。ロバート・グラスパーとの演奏の時よりも好みかな。前作のチャーリー・ハンターとの曲を思い出す浮遊感のあるトラックは多分クエストラブの様な気がする。ロイ・ハーグローブのまろみを帯びたホーンがまたそういう印象を強めます。また、各地でカバーする人が出そうだけど、これまた相当難易度が高そうだ。
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一番私が知りたいのはギター陣のクレジットですね。D本人、ジェシー・ジョンソン、故スパンキー、アイザイア・シャーキー、マーク・ハモンド。チキン・スクラッチする"Sugah Daddy”は前作の実績?でD、オハイオ・プレイヤーズのD解釈のような"Another Life"での星屑煌めくギターはスパンキーかと思うのだけど、アイザイア・シャーキーかも。"The Door”でスチールギターを弾いているのは誰なのか?浮遊感満点の"Betray My Heart”で弾いているのは?急転直下してくねりまくる"Prayer”での面白いギターは?個人的には"Ain't ・・・"での壊れたギターはディアンジェロ本人であってほしいかな。
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アイザイア・シャーキーには結構期待している!

というわけで、23日に購入して以来、ずっと聴き続けているわけですが、毎度冒頭の2連発でやられ、最後の"Another Life”で満足して、またリピートしてしまうという、恐ろしいほどの習慣性があるアルバム。冬休みに入る今のタイミングで助かりました。黒い芳香が漂う音のかっこよさもまた格別。流石はラッセル・エレヴァード!2月のアナログ発売がまったく待ち遠しい!このレベルのものを出してくれるのだったら、また10年待ってもいいけど、出来たらそれは勘弁ね。この音の進化していく先が見たくてたまらないのでね。噂ではDさん、拡大版も予定しているそう。でも、その辺はあまり期待しすぎないようにしましょう。

☆☆☆☆☆☆☆☆ (☆5個で満点)

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ブラック・メサイア”は、アルバムに付けるものとしては、とんでもないタイトルだ。容易に誤解を招くであろうし、多くの人は宗教的な事を想像するだろう。人によっては俺が自分自身を“ブラック・メサイア=黒い救世主”と呼んでいるものと決めつけるかもしれない。だが、俺にとってこのタイトルは俺達みんなについての事を意味しているんだ。それはこの世界全体についての事でもあるし、俺達みんなが目指すことのできる考え方を示すものでもあるんだ。俺達は皆、“ブラック・メサイア”になれるように志すべきなんだ。

それは、“ファーガソン”や“エジプト”や“ウォール街を占拠せよ”その他、これ以上我慢がしがたい状況に対して変化を求めるべく決起している全ての場所の全ての人々についての事なんだ。それは一人のカリスマ性のあるリーダーを称賛するということではなくて、大勢のそういった人々を讃えるということなんだ。このアルバムの全曲が政治的メッセージ色の強いものではないけれど(多くの曲がそうではあるけれども)、このアルバムを“ブラック・メサイア”と呼ぶことがこれらの曲が一番しっくりくる風景を作りだしている。

“ブラック・メサイア”は一人の人を示すものではない。それはまとめると、俺達みんながそのリーダーなんだという感覚を示すものなんだ。


オキュパイ・ウォール・ストリートに触れてくれているのがなんだか猛烈に嬉しい私。
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by zhimuqing | 2014-12-27 03:09 | Funkentelechy | Comments(0)
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