設立したレーベルStone Flowerの作品集がオフィシャルで遂に登場。 これは本当に待望の1枚(LPは2枚だが)と言ってよいでしょう。 プロダクションとしてのStone Flowerの作品も含まれていて、 こういうものは本当にありがたいものですね。 配給はアトランティックがやるようになっていたようで、 ライナーにはジェリー・ウェクスラーとの写真も。 全5枚のシングルに未発表曲8曲加えた18曲というだけでも 血がたぎって鼻血が出るというものですが、 スライへのインタビューを含むブックレットがまた大充実。 何と言っても活動期間が1969~1970年ですからね。 大傑作≪Stand≫を発表、ウッドストックで世界の度肝を抜いた後、 シングル“Thank You”で以降の音楽の構造を塗り替えたり、 畢生の金字塔≪暴動≫の録音に入っている時期の音ですからねぇ。 入手して結構時間は経っているのですが、柏手を打つこと10日間、 ようやく心が落ち着いたところなのであります。 収録アーティストはヴェット・ストーンを含むリトル・シスター、 スライに昔ブルース・ハープを教えたらしい旧友ジョン・ヒックス、 そしてローカルバンドSoul Rascalsを仕立て直した6ixの3組に加え、 スライのソロ名義の曲が加わるわけですが、 リトル・シスターの歌や6ixの演奏も悪くない(というより良い)ですが、 やはりここはStandと暴動の間を繋ぐミッシング・リンクとしての スライの音の変遷を見ていくのが一番の醍醐味ですよね。 ビッグでファットなバンド・サウンドを極めたスライが 自身の音楽をよりパーソナルな方向に持って行く大きなきっかけに なったことは間違いないでしょう。 頭の中でずっと鳴っていたであろう、ヒョコヒョコ飛び跳ねるような 変幻自在のフットワークを魅せる音がここで一気に開花していますね。 スライ自身の手になるのであろうキーボードやギター、 そして低音や最高音をバスっと抜いたあの独特の音色のベースが たっぷり聴けるだけで、≪暴動≫を人生の音楽ベスト5(ベスト3?)として 崇める私としては、大変ありがたいものですね。 実力も十分、ルックスもキュート! 未発表の蔵出し、バンドバージョン“Somebody’s Watching You”は あの名曲のカバー、しかも演奏はファミリー・ストーン!なんだけど、 濃厚な演奏に負けない溌剌とした歌が魅力的で この後スライがボロボロになっていくので仕方ないとはいえ、 フェイドアウトしてしまったのが勿体ないですね。 ルックスもキュートだし。 ちなみにバンドのダイナミズムを減らしたスライ独演演奏版が 2枚目のシングルだが、先の演奏を聴くとやや弱く感じるかも。 70年にひっそりと発表されたシングルですが、 時代の5年は軽く先を行ったカッチョ良さ。 ライナーによると、キーボードにビリー・プレストンが参加していて、 ホーンはシンシアとジェリーだということですが、 リズムの押しの強さから言ってファミリー・ストーン丸々のように 思えるけど、どうでしょう? 少なくともベースはラリー・グレアムの様な気がするのだが。 この曲は69年録音の未発表デモバージョンも収められており、 これも油断出来ない。ドラムはなんと驚きのバディ・マイルス! この絡みも全く予想していなかったな。 グレッグ・エリコの方がスライには合っているけど、 バディ・マイルス、本当にこの時期のキーパーソンだな。 それにしても69年というと、12月にジプシーズのリハに入る時期。 スライとジミのセッション、どこかに残っていないのか? 一方、2枚目のシングルのフリップ “Strange”は打って変わって リズム・エースに合わせてスライがほぼ独力で楽器を重ねた曲。 ワウを効かせたギターとキーボードの不安定なフレージングは 以降のファンク界の演奏のあるべき姿を示しつつも、 誰もその神髄に近づけなかった、あの演奏ですね。 結婚するためにメンバーが一人抜けて3人になったとのことで、 その抜けたのがなんとトレメイン・ホーキンス!! これは相当びっくりしましたね。 トレメイン・ホーキンス、日本じゃ最近名前を目にしませんが、 80年代ゴスペル界の大スターではないか! 結婚した相手は名門中の名門エドウィン・ホーキンス一家のウォルター。 (既に別れたとの話もありますが) リトル・シスターの3人の実力だって相当なものですが、 ここにトレメインが加わっていたとなると、歌とルックス含め、 70年代最強のヴォーカル・カルテットになっていたのは間違いないのでは? しかもバックを務めるのがファミリー・ストーンだったら!と 私の妄想は膨らむ一方ですな。 スライのハーモニカの師匠のジョン・ヒックスはライナーによると かなり熱いパフォーマンスをする人だったようですが、 歌もハープも正直印象にはあまり残らないものの、 曲というか、演奏がどれも良く、これまたアルバムの目玉かと。 セプターから発売されていた“I’m Going Home” / “Home Sweet Home”、 そんなに家(故郷)に帰りたいのか!という感じだが、 バックの演奏はこれまたファミリー・ストーン!! 特に“Home…”のほうはフレディ/ラリー/エリコのリズム隊が 縦横無尽に暴れ回るのにタイトに決まっているという、 流石に世界制覇しただけのことがあると改めて感じさせる演奏。 溜息しか出ません。 “Luv N’ Haight”的ですが、重心の定まらない浮遊感といい、 リズム・エースのリズムといい、一筆書きの様な演奏といい、 暴動の完全な露払い的なもので、私が一番期待していた音かも。 とはいえ、無名のミュージシャン、しかもスライは変名、 しかもこのダウナーな音となると、これは聴く人を選ぶというか、 まあ全く売れないだろうなという感じですが、 流石に40年以上経つと熟成して芳醇な味わいです。 6ixはスライとバディ・マイルスが集めたバンドのようだが、 “Dynamite”はファミリー・ストーンの3枚目Lifeの曲のカバーだが、 曲と演奏はオリジナルよりも良い。 バンド名義ですが、ギターやキーボードは完全にスライ印。 ただ、惜しむらくは歌の個性というか味わいが薄い。 むしろリズム・エースが叩いている?“I’m Just Like You”の歌のほうが、 80年代的な感じもあり、面白いかな。 寄せ集め感、本人達不在感がプリンス周辺っぽくもありますね。 “Trying To Make You Feel Good”がこれまた時代の先取り感があり、 カッコいいかな。 後ろで叫ぶグレアム的に吼える声もいいし、 それぞれの楽器でブレイク作る感じもある意味スライっぽいし。 重心の低いドラムはもしかしたらバディ・マイルスかもと思うけど、 もう1曲の“You Can, We Can”を聴くと、少し自信が無くなる。 バンドのドラマー、ジル・ボッティグリエリかもしれない。 この“You Can, We Can”は割と普通な感じで、アルバムの中では弱いかな。 未発表曲の残り2曲は既発曲の別バージョン。 “I’m Just Like You”のフルバンド・バージョンは リズム・エース入りをやはり超えられず。 “Dynamite”の別バージョンもアルバムの中では弱いかな。 これは≪暴動≫のデモといってもいいでしょう。 “Just Like A Baby”と“Africa Talks To You”。 いずれも≪暴動≫の曲のデモで、出来としては暴動バージョンが上ですが、 この時期のスライはフレーズの一つ一つが貴重なので、 私はとても嬉しいです。しゃぶりつくしたい。 “Spirit” と“Scared”は更に一筆書き的な音源ですが、 メロウな響きもあり≪Flesh≫辺りにも通じる空気も。 万人には薦めません。というか、薦められない。 でもね、この中には真髄の中の髄液というか、そういうモロモロが 切り口からドロリと染みだしてくる凄味はあるのかな、と。 あとは聴き手がどれだけ吸いだせるか、にかかっているのではないかと。 私もどれだけ出来るか分かりませんが、限り吸い出したい。 いいもの出してくれました。ありがとう。 次は映像集、頼みますよ!色々と隠し持っとるっちゃないと?
by zhimuqing
| 2014-11-24 00:28
| Funkentelechy
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