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旨み成分の海に浸る

何事もフォーマットとして完成していたものより、発展途上であがいているものの方が旨みに溢れる訳で、私が愛好する黒い音楽もやはりある意味で混沌とした、別の見方をすれば、有象無象のものがワラワラガヤガヤとそれぞれの思惑で盛り上がっているものの方が面白いかと、まあ、そんなことを考えるのですね。

レゲエやダブなんかもそんな感じで、ボブ・マーリーなんかも、スーパースターになった後の安定感や完成度も素晴らしいのだけど、洗練されていく中で削ぎ落とされる過剰なものや雑味のなかにこそ、旨みとか殺気成分が多く含まれると断言したいのですね。アイランドのアルバムだと、初めの2枚に尽きるし、その前の時代、例えば≪African Harbsman≫の旨みなんかは
他の音楽を含めてもなかなか得難いものであるのですね。

ということで前ふりが長いのですが、Rock Steadyの王様アルトン・エリス。スカからレゲエに音楽が変遷していく中でのリズム(この場合、リディムですね)が完成する前の実に旨みたっぷりのバックの音も実に素晴らしいが、その音に乗せて歌うアルトン・エリスの魅力は表現に困るほどだ。軽やかでいて腰のあるグルーヴ、スムーズなのに溢れだす哀感と説得力、The Soul of Jamaicaと謳われるのもむべなるかな。

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歌自体も良いが、リディムのうねりをすくい取るような自作曲、オーダーしたかのように新しい解釈を施したカバー曲での解釈、優れた歌手というのはそういうものなのかもしれないが、溜息しか出ませんね。

アルバムはなんといっても、初期の2枚に尽きる。トレジャー・アイルでの≪Mr. Soul of Jamaica≫とスタジオ・ワンでの≪Sings Rock And Soul≫。

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はっきり言って甲乙つけがたいし、どちらも決定的な名曲が入っているし、全盛期のキレキレのアルトンの歌唱は美しいの一言。差はバックを付けるバンドの味わいの差だけ。≪Sings…≫はソウルヴェンダーズ、≪Mr.…≫はスーパーソニックス、いずれもジャメイカ史上最高級のバンドなので、これまた甲乙つけがたいのですね。(甲乙つける必要も無いけど)

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ジャケはこちらの方がずっと好き!

スーパーソニックスのベイシストのジャッキー・ジャクソン、譜面で割り切れない音符と休符の何気ない置き方がたまりませんね。私が憧れてやまないあの成分がこれ以上なく濃厚に含まれています。とはいえ、ソウルヴェンダーズのほうも当然素晴らしく、ジャッキー・ミットゥーのキーボードだけでも凄いのにカリブの至宝アーネスト・ラングリンのギターも味わえるという、なんとも贅沢な音の塊なのだ。

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まあ、よりフォームが固まっていない(=古い録音)の≪Mr.…≫のほうが雑味が多くて、切れ味がいい意味で鈍くて、今日の私にはより面白いかな。とまあ、そんな感じで今日も旨み成分を求めてアルトンを聴くのだ。

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ちなみに≪Mr…≫のほうは拡大版の2枚組が最近出ている。値段も手ごろなので、興味のある方は是非!

by zhimuqing | 2013-09-04 23:28 | On The Corner | Comments(0)
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