痛快な1枚だ

ということで、ロバート・グラスパーの新作(輸入盤)が遂に発売。
今年前半の話題作、個人的にも待望の1枚です。
まだ通して10回ちょとしか聴いていないので、結論づけるのは時期尚早だが、
今年度屈指のアルバム、ベスト3確定かな。
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ジャケも大変良い。
グラスパーのプレイを見事に体現。

バンド名義なだけに、全曲固定メンバーによる演奏。
グラスパーのピアノとローズ、デリック・ホッジのベース、
ケイシー・ベンジャミンのボーコーダーと管楽器、
そしてクリス・デイヴのドラム。
まあ、ほぼマックスウェルのバンドのようなものですが。
これ見よがしのインタープレイではなく、それぞれの奏でる音に対して、
官能的に反応する様が大変美しい。
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なんといっても、グラスパーの演奏は聴いてすぐに分かる個性の塊。
スタイリッシュでクールなので、よくモンクと比較されているが、
フレーズを自分の中で捻った挙句、音が飛び上がるようなモンクに対して、
グラスパーは空の上から降ってくる隕石のようなイメージなので、
個人的には随分違うと思っているのだけど、どうなんでしょう。

このバンドでも、その持ち味が存分に発揮されているのだけど、
流星雨のように降りてくるピアノのフレーズを
地上で自在に弾き返すデイヴの躍動感とあいまって、
なかなか得がたい磁場が発生している。

豪華ゲストの使い方も実に効果的。
こういうゲストテンコ盛りの話題作というのは、
派手なお祭り騒ぎになって、興奮が冷めると何も残らないことが多いが、
曲の選択も含め、適材適所というか、この人でなくてはならないという
そういう必然性を感じるものが多く、これまた好印象だ。

グラスパーのあの鍵盤の上にシャフィークが重なるオープニングは、
アウトロ?でのエリカ・バドゥ達によるパフォーマンスがこの上なく美しい。
ちなみに、このアルバム、アウトロというかインタルードが結構入っているが、
それぞれがいちいちカッコいいのも、特筆すべき点ですね。
バドゥは続く②で弾むリズムの上で抜群に敏捷な身のこなしを見せつける。
こういう音をバックにすると、バドゥは今や無敵、
早く新作を出してほしいものです。(来日公演も)
原曲の良さを活かしつつ、バンドと歌も最高のパフォーマンスを聴かせる。

バンドとしてのシャーデーが持つ本来のリズムの強さを抽出した③では、
レイラ・ハザウェイが低体温で滑らかに旋回する。
もちろん歌手としての厚みはハザウェイの方がずっと上である訳だが、
余白と余韻をどのように活かすか、緻密なリズムの構築をこっそりと。
捩れたシンセのソロも良い感じ。
レイラ・ハザウェイはラサーンとの共演もあったし、ここのところ好調ですね。
続く④では、静と動の組み合わせ具合が鮮やか。
丹精にライムを綴るルーペ・フィアスコとエモーショナルに唸るビラル。
ビラルとの相性はことのほか良いように思える。

傑作≪In my element≫収録曲のセルフカバー⑤はアルバムのピークの一つ。
迷いのないレディシの歌が聞かせる。
歌が静溢な湖に舞い降りる水鳥のような軌跡を描き、
並走するピアノはその水紋のよう。
とはいえ、リズム隊が随所で仕掛けてくるので、
単なるチルアウトした演奏に留まらない。
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⑥では、個人的に期待している西海岸の女性グループKingのフックアップ。
これまた、ティンバランド経由でのシャーデー発展形を思い起こさせるが、
KINGの歌にジャネイを思い出す私。アルバムにも期待したい。
ミュージック・ソウルチャイルドとクリセットが登場する⑦は、
イレギュラーなドラム、パラパラと降り注ぐピアノに
抑制が効いた二人の声が重なる。
中盤のケイシーによる耽美なソロも抜群。

マイロンとの共闘が大変良かったンデゲオチェロは⑧で登場。
ややダウナーな曲調だが、ここ数作でのンデゲオチェロのアルバムよりは
ずっと聞かせる。
ベースをンデゲオチェロに弾かせると、更に凄い曲になったと思うが、
バンドに対するこだわりの表れということで、まあ良しとしよう。
(でも、やっぱりもったいない気がする。)
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今日現在、②⑤と並ぶ山場はミントコンディションのストークリーとの⑨。
アリとの共演だったオリジナルも良かったが、
やはり広義の意味でアフロ成分に溢れたこっちの方が凄いね。
08年の秀作≪E Life≫のカバーだが、バンドの演奏に触発されたのか、
引っ張ったり捻ったり伸ばしたりと、ストークリーが素晴らしい歌を披露する。
ドラムが刻むミリタントビートがピアノのフレーズに触発されて
変形していく様子が痛快だ。
以前、このメンバー5人で来日公演やってたんですよね、たしか。
ああ、もったいないことをしたなぁ。

⑩にはモス・デフ改めヤシーン・ベイが登場、
何度聞いても、得意?のアンドロイドのようなライミング?が面白い。
ベイベイベイベイベイベイベイベイベイベイベイ、ベイ!
あれって、やっぱりオールドスクールのエレクトロな時代を思い出す。
歌も悪くないけど、ラップで通した方が良かったかも。

⑪はデヴィッド・ボウイ、⑫はニルヴァーナの有名曲のカバー、
ということなのだが、いかんせん、元の曲を良く知らないので、
原曲との比較というかコメントは出来ないけど。
ビラルの滑らかな歌が光る⑪はサンバっぽくリズムが変わっていくが、
アルバムの中では比較的ストレートな演奏で、やや印象が薄いか。
⑫でのボーコーダー使いは完全に◎、私の好みです。
熱心なカート・コベインのファンには嫌われそうですが。
でも、これは原曲も良いのでしょうね。
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ということで、何度もリピートしてしまうこのアルバム、
もしかしたら、2010年代を代表するアルバムなのではないかと
早くも断言してしまいたくなるのだが、どうなんでしょう?
少なくとも、今年屈指の傑作は間違いない。
ヒッポホップ、ブラックポップ、ファンク、ジャズ、
どのジャンルとしてみても、痛快な一枚。
いっぱい売れてほしいな。
おしゃれな音楽として、表面的な扱いでもいいので。

来日公演も見たくなるのだが(でもチケット取れなさそう)、
ちなみに Bootleg Radio として、ライブ音源がダウンロードできるのだが、
こちらはまだあまり聴けていないので、また機会があれば。
でも、早めに入手しといた方がいいと思います。(ゲストも凄い)
続編が早くも聴きたいぞ!
その時はですねぇ、ゲストには是非ともモネイとラサーンとジョイと
アンドレとシーローとドゥームを入れてください。
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by zhimuqing | 2012-02-29 06:28 | Funkentelechy | Comments(5)
Commented by summerbreeze1 at 2012-02-29 13:49 x
笑いました。欲張りすぎです。>モネイとラサーンとジョイと
アンドレとシーローとドゥームを入れてください。

まだ聞いてないんですが、すごくよさそうですね。楽しみです。
Commented by zhimuqing at 2012-03-01 00:08
>> summerbreeze1 さま

興奮して取り乱していたようです。(汗)

このアルバム、JASPECTSの音にも結構近いように思うので、
モネイは間違いなくジャストフィットするはずなので、
ここにモネイがいないのは納得いかないっす。(笑)

今年このアルバムを超える可能性があるのは、
ジャネル・モネイの新作しかない!ので、
そろそろ新作のニュースが聞きたいところです。
あとは、新作出たら、期待できそうなのは、
やっぱりJASPECTSですよね。
最近どうしてるのでしょうね。
Commented by summerbreeze1 at 2012-03-01 00:22 x
そっか、ジャネルはJaspectsとの共演経験がありますからね、
ジャズでもばっちりハマるはずですね。
それにしてもJaspectsは調べてもまったく動きがないです、残念。

それはそうと、ジャネル、エステルの新作に参加してますね。
たくさん歌ってるといいんですが。
Commented by zhimuqing at 2012-03-01 21:27
>> summerbreeze1さま

エステル、実はこれまで聴いたことないのですけど、
モネイちゃんの友達はワタシの友達!
きちんと聴かなければ、と心を改めているところです。

あと、ロックバンド?のFUNとのPVが良かったですね。
クラブの中がスローモーションでぐちゃぐちゃになるPV。
でも、出番がモネイちゃんの出番が少なすぎるかな。

後で出たアコースティック・ヴァージョンのほうは、
モネイちゃんのお姿(相変わらず小さい!)が良く映るのは良いけど、
男のボーカルが邪魔で邪魔で仕方がありません。
Commented by summerbreeze1 at 2012-03-03 18:57 x
そうそう(笑) funについてはまったく同じことを思いました
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