互いに引っ張り上げる兄弟

宮部みゆきの「ぼんくら」を読み始めると止まらなくなり、
早くも続刊の「日暮らし」の上巻を読み終えたところなのです。
それにしても、この人が書く江戸ものは本当に心に優しい、というか
柔らかく気持ちに染みいっていく感じですね。
そりゃ「模倣犯」とかそういう心の闇を描く話ばかりだと
精神的なバランスが取れなくなってしまいますもんね。
その分、こちらでバランスを取っているのでしょう。

さて、5月に予約したCD、無事本日我が家に届きました。
The Ruffin Brothers 『I am my brother's Keeper』。
アメリカのサイトから直接買おうとするも拒否され、
一時はどうなるかと思いましたが、本日HMVから届きましたよ。
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さて、今この瞬間、まだ6回しか通して聴けていませんが、
これはまごうことなき名盤ですね。
6回しか聞いてないけど、断言できますね。

デイヴィッド・ラフィンの素晴らしさはもう改めて語る必要もないけど、
その兄ジミー・ラフィンに関しては、恥ずかしながら今日初めて
その歌を聞いたのですけど、まったくイメージが違いました。
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ものの本とかそういうのには、豪快な弟、デイヴィッドと比較して、
地道な、とか、ソフト、とか、ジェントルな、とか、そういう形容詞が付いていて、
私も知らず知らずのうちに、そういうイメージに捉われていたのだが、
やはり百読は一聴に如かず、自分の耳で判断しないとだめですね。
デイヴィッドよりも少し高めの声だが、なかなか攻めるし、
ギリギリと絞り上げるような感じもあって、結構私好みの歌手でした。

そんな歌なんだけど、これがデイヴィッドと張り合って、
ヴォーカル・バトル状態になるかと言えばそうでないのが、これまた良い。
二人の声のバランスが絶妙、痒い所に手が届く感じ?
豪快なデイヴィッドを引き立てるだけでなく、お互いに引っ張り上げあっている感じ。
実に素晴らしい。

テンプス時代のデイヴィッド&エディとの華麗なコンビだと、
匠の技で磨きあげた至高の美しさ、という感じだが、
ジミーとのコンビになると、もっと体質的に合うというか、
何も準備せずにそのまま混じり合う感じ?
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それにしても、デイヴィッドの歌は実に素晴らしい。
豪放といってもいいけど、少し言い足りない感じ。
ギリギリの線を攻めるというよりも、そこを平気で踏み外しそう、というか、
まったく破綻を恐れない、とでも言いますか。
聴いていて、こっちが大丈夫か、と心配して、ブレーキを踏みたくなる感じ。
でも、本人はファルセットをぶちかまして、
何もなかったかのように戻ってくるところんですけどね。
とにかくスリル満点。
名シンガー、数あれど、もしかしたら、一番好きな歌手かも。

もっともスピード出し過ぎて激突しなかったことがないか、というと、
勿論そういうわけがなく、ソロアルバムの3、4枚目なんかは
勢い余ってガードレールを踏み越えてしまうようなところがあって、
若干聴きづらくなってしまうようなところがありますね。
とはいえ、本人の素質というかスケールが収まりきらなかったのだから
これはもう、仕方がないというより他はないですね。
テンプス時代のラフィンの魅力は逆に枠に押し込められつつも
そこで抑えに抑えた男の情熱が透けて見えるのが
たまらなかったりするのですけどね。

で、このアルバムですが、ジミーと一緒に歌うとですね、
いくら踏み込んでも、良い意味で安心感があるんですね。
お互いが支え合うので、大丈夫というか、そういう感じ。
力任せにシャウトしても、全く問題なし。

アルバムはこの時代のモータウン、というかソウルに多い、カバー曲主体の作り。
スタンド・バイ・ミーとかデルフォニックスとかタイロン・デイヴィスの他にも
ロック系の曲が入っているけど、二人の黒々とした灼熱の歌、
そして69年のファンクブラザーズが演奏しているので、
問題ないどころか、理想的な音になっていますね。
サイケになりすぎる前のファンキーな演奏が素晴らしいです。
特にジェマーソンがカッコよすぎる。
スタンド・バイ・ミーだからって舐めては痛い目にあいます。

ブックレットを見ると、デトロイトのヒッツヴィルのスタジオBで録音されているよう。
この辺の事情はあまり詳しくないけど、たしかスネイクピットと呼ばれてた
メインスタジオはスタジオAだったと思うので、アルバムが録音されたのは、
サブのスタジオになるのだけど、その辺の経緯もなんとなく
このラフィン兄弟に似合っているようで、感慨深い。

それにしても、もう少しこのデュオの音源残ってないのかな?
ブックレットを見ると、デイヴィッドはあまり乗り気でなかったらしいので、
アルバム1枚、この時期の録音で残っているだけで良し、とするしかないか?
もし出来るのだったら、デイヴィッドの当時の彼女タミー・テレルと
アルバム作ってくれてたら良かったのにね。

ちなみにブックレットには、タミーの逸話が書かれているのだが、
どうも兄弟でタミーを取りあった、というか、そういうニュアンスを感じます、はい。
あと、ブックレットによると、モータウンと契約前にチェスで
レコード何枚か作っているみたいのなので、その辺、どこか再発してくださいな?
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ブックレットから。
この後のデイヴィッドの辿る人生を考えると、これも感慨深い。

とまあ、そういう訳で個人的には今年度№1リイッシューですが、
HIP-Oセレクトからの発売で、全世界限定7000枚。
日本に何枚入って来ているかよく分からないけど、
デイヴィッドが好きな人は早めに買っといた方が良さそうですよん。
幻の3枚目のアルバム『David』も即行売り切れてしまいましたしね。
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こいつを買う時に初めて海外の通販を使ったのだけど、
それが運のつきで、浪費をしてしまう羽目に。
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ヴァン・マッコイと組んだアルバムは評価が分かれるけど、
私は大好きです、はい。
その後にワーナーで作ったアーバンな音でもデイヴィッドも好きなんです。
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すみません、ジミーさんも聴いてみることにします。
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by zhimuqing | 2010-08-21 23:53 | Funkentelechy | Comments(0)
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