硬骨漢に喝破されるも、弱点も発見する

天木直人の新刊「さらば、日英同盟」の刊行記念講演会、
子供が帰ってくる日と重なったため、聞きに行くのを諦めたのだが、
肝心の本のほうは近所の本屋で平積みになっていて、
結構売れているようですね。
遅ればせながら私も購入したのですが、
大変読みやすい文章で、中身も面白いのでほとんど一気読みしました。
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アメリカ追従外交を辞めて、独自の安全保障制度を構築すべきだという
元外交官の天木直人ならではの提案をまとめたもの。
普天間基地返還問題を縦軸に、日米安保の歴史的な経緯を横軸に
自民党や外務省の動きをそこに絡めて丁寧に説明していて、
しかも、あまり公になっていない情報もまとめているので、
非常に勉強になりますね。
日米安保条約を結ぶことが昭和天皇の強い意向だったことや
吉田茂の調印時の葛藤ぶりに関しては、この本で初めて知りました。

冷戦終結とともにその役割を終えた日米安保条約の条文中に
アメリカが日本を守るとどこにも書いていないと指摘し、
アメリカの要求は全てアメリカの利益のために行っているのだと喝破する。
アメリカ大使館が赤坂の一等地を借りていながら、地代を10年も滞納していることや
岸伸介や佐藤栄作がCIAから資金提供されていたことからも
その辺の状況は推して知るべし、ですね。
日本のためにアメリカの若者が傷つくことをアメリカ国民は認めないし、
その時の大統領が国民に逆らって指令を出すこともない、という意見は
私もその通りだと思いますね。

「憲法9条を一字一句変えてはならない最強の護憲主義者」と自称する筆者は
護憲論者はこれまで安全保障政策に関して議論するのを避けてきた、として
如何に9条を活かしながら、有効な安全保障制度を構築するか、熱弁をふるっている。

今の日本に防衛予算を増やす余裕はなく、限られた土地に主要機能や原発が
密集していることから、もはや単独自主防衛という選択肢はない、とし
ローコスト、確実、自立を可能にする自主防衛策として、
憲法9条を前面に押し出した外交を進め、自衛隊を専守防衛の組織とし、
東アジア全体を含む集団安全保障体制を構築すべきだと論を進めている。

アメリカに従属することのメリット、デメリットや、
細川内閣の時に出された樋口レポートに対するアメリカの反応、
レバノン大使だった時のイスラエルとアメリカの横暴等、
様々な角度から分析した結果としての提案であり、
これをベースに議論を広げていける、それだけの余地がある提案だと思います。

「アメリカも中国も等しく重要だ」ではなく、「アメリカも中国も等しく油断できない」から
軍事同盟から安全保障体制に軸足を移すべきだというこの本の主張が
一定以上の説得力を持つ理由としては、本の中では触れられていないが、
やはり新興国、とくにBRICSの台頭が背景にありますね。
アメリカ一辺倒では今後難しいという判断は、
田中宇のいう世界の多極化の流れと同じものだし、
金子勝がずっと追っているアメリカの経済指標の悪化とも一致しますね。

ということで、なかなか考えさせられる本でした。
この辺の話に興味がある人は是非読んで欲しい本ですね。
次回、講演会がある時は万難を排して見に行こうと思ったのであります。

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イラク派兵を決めた小泉政権に弓を引いて外務省を追われた天木直人、
この硬骨漢に一つだけ大きな問題と言うか弱点があるとしたら、
彼が嫌っているだろうそのコイズミに面影が見ているところかな。
若干、姜尚日に似ているとも言えないこともないけど。
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by zhimuqing | 2010-08-11 23:58 | Make Me Wanna Holler | Comments(0)
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