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やはり中国の歴史は面白い

「周恩来秘録 党機密文書は語る」を読んだのだが、
やはり建国後の中国共産党というか毛沢東関連、ハズレは無いですね。
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中国の歴史はどの時代も面白いのだが、
毛沢東の時代は流石にリアルタイムではないけど、
その余韻をひきづっている状況で読むことが出来るので
鮮度が良くて、生々しさが増すのが良い。
その上、登場するメンツのキャラクターがこれまた濃厚。
読み応えも増すのも当然だ。

夫の権力を笠に着て暴れ放題の元女優(実は夫婦関係は既に無い)、
罠に嵌ってなす術も無く失脚させられる№2、
№2を失脚させるために尽力し、自分がその位置につくも、
同じように失脚させられそうになり、トップを暗殺しようとする病気がちの男、
権力争いの中を絶妙なバランスで生き延びていく実務者、
昔の友情を信じて直言して、そのまま裏切られる仲間、
スターリンの下で政敵を粛清する手法を学んだ粛清マシーン、
何度も失脚するが、その度に復活してしまう実力者、
権力闘争を利用してなりあがろうとする取り巻き達。

そういう面々が、絶大な権力と明晰な頭脳を持ち、猜疑心と陰謀に満ちた
ジャイアンのようなトップに振り回される構図なので、
これはどうやっても面白くなってしまうのである。

しかも、その間に起こる大躍進運動とか文化大革命が
これがまた歴史に残るであろう稀代の失政。
中国の発展がこの運動で30年は遅れたと言われているのだが、
実際にこれを経験した人には大災難だったと思うけど、
読み物としては読むには、申し訳ないけど面白いのだ。

もう一点面白い部分は、歴史的な評価がまだ定まっていない点で
著者の立ち居地によって、描かれ方が全く違ってくるのだ。
しかも新しい文書類が発見(というか解禁)されたり、
これまで口をつぐんでいた人が新事実を話したりと、
そういう変化があるのも、同時代に生きている感じがして面白い。

中国で初めて読んだ回顧録「人間毛沢東 最後の護衛長・李銀橋は語る」は
基本的に毛沢東礼賛の路線の本、
毛沢東の専任医師であった李志綏による「毛沢東の私生活」は
中国本土で発禁になっているだけのことがあって
毛沢東の私生活(特に性生活方面!?)を暴いたもの。
(ちなみにこの本に対する反論本はあるらしいが未読。)

今回読んだ本は周恩来の公的な伝記を作成した人が書いた本だが、
基本的には毛沢東に対して批判的なスタンス。
まあ正直言って、批判的なスタンスで書いている本のほうが
スキャンダラスな面も含め、面白いんだけどね。
ということで、この本も中国本土では発禁扱いです。

今回の本はこれまで読んだ本に比べ、
毛沢東周囲の人々が良く描写できているのが特徴的。
個人的には、現代の中国では絶対悪のように言われている
林彪に興味を持ちましたね。
№2の地位にありながら、失脚を仕掛ける毛沢東に対抗して
暗殺計画を立てるも失敗し、ソ連に亡命しようとして
モンゴルで墜落死する謎に満ちた生涯。
鄧小平路線の延長上にある今の中国では、
この辺の事情は決して明らかにされることはないだろうし、
新たな文献が発見されることもないんでしょうけどね。
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林彪№2時代のポスター。
『毛沢東万歳!万歳!万々歳!林彪千歳!千歳!千千歳!』
結構笑えるスローガンですね。

しかし、やはり一番の読みどころは晩年の周恩来と毛沢東の暗闘。
癌を患いながら、毛沢東の攻撃をかわしつつ、
最後の力を振り絞る周恩来の生き様は実に凄まじい。
これが理想的な生き方であったかどうかは本人しか分からないが。

前半部の文革時代の風見鶏具合には若干幻滅するのだが、
晩年の気合と精神力にはやはり感服してしまう。
その死後に民衆が大規模な追悼デモを行うさまには
グッとくるものを感じるのであります。
それにしても毛沢東の権力と名声への執着心、
そして周恩来への嫉妬心の凄まじさには度肝を抜かれる。
今後出てくるであろう新たな資料にも期待したいものだ。
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by zhimuqing | 2010-05-26 23:20 | La Sombra Del Viento | Comments(0)
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